シンバルには製造や加工の違いで音が大きく変わってきます。金属の配合比率に関しては公表していないメーカーが多いため、違いが明確にできず、選ぶ際にあまり参考にならないため、配合比率以外のポイントを紹介します。
まずは2種類の製造方法の違いから解説していきます。
1つの「インゴット」と呼ばれる合金の塊を伸ばして製造されたシンバルを「キャストシンバル」と呼びます。古くからこの製造方法でシンバルは作られており、現在でも多くのシンバルが同様に作られています。手間がかかるため、コストもかかりますが、豊かな倍音とサスティーンを感じる事ができます。経年変化で音が変わっていくことを「シンバルを育てる」と言ったりもします。
音色 | ダーク 深みがある |
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倍音 | 豊か |
輪郭 | 柔らかい |
合金のシートを円形状に切り取る製造方法で作られたシンバルを「シートシンバル」と呼びます。「キャストシンバル」に比べ、コストがかからず大量生産が容易なため、比較的安価なシンバルに採用されています。しかし、名器と呼ばれる「Paiste / 2002」シリーズなどはシートシンバルの代表格であり、価格も高いだけでなく、高クオリティなサウンドが人気を博しています。レスポンスが良く、明るくハッキリとしたサウンドが特徴です。
音色 | 明るい キレがある |
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倍音 | 少なめ |
輪郭 | シャープ |
次にシンバルの音を左右するポイントを5つ解説していきます。どのシンバルにするか迷った際や、数あるシンバルの中から目星をつける際に役立ててください。
「サイズ」はシンバルの大きさ、直径です。
大きい | 小さい |
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ボリュームが上がる | ボリュームが下がる |
ピッチが下がる | ピッチが上がる |
サスティーンが長い | サスティーンが短い |
レスポンスが遅い | レスポンスが早い |
「ウェイト」はシンバルの厚みや重量を指し、厚くなれば重量も増加します。厚みは以下の種類があります。
厚い(重い) | 薄い(軽い) |
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ボリュームが上がる | ボリュームが下がる |
ピッチが上がる | ピッチが下がる |
サスティーンが長い | サスティーンが短い |
「テーパー」は先細りになっている形状を指します。シンバルにおいてはカップからエッジにかけての勾配といえば分かりやすいでしょうか。角度がついているものとフラットなもので音の性質が変わります。
角度がある | 角度がない |
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ピッチが上がる | ピッチが下がる |
サスティーンが長い | サスティーンが短い |
倍音が多い | 倍音が少ない |
「レイジング」加工とはシンバルに円形状の溝を入れる工程を指し、職人の技術が試される加工です溝が全くないものの中には「ブリリアント」加工と呼ばれる高音が強調されるコーティングをする場合もあります。
溝が多い | 溝が少ない |
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倍音が多い | 倍音が少ない |
アタック音が弱い | アタック音が強い |
シンバルにハンマーで「打痕」を入れる加工が「ハンマリング」です。「レイジング」加工と同様に職人の技術により左右される工程です。現在では「マシーンハンマリング」と呼ばれる機械での加工も多くなっていますが、職人の手による「ハンドハンマリング」技術は素晴らしいの一言です。
打痕が多い | 打痕が少ない |
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倍音が多い | 倍音が少ない |
ダークなサウンド | 明るいサウンド |
以上の要素の組み合わせ方次第で、多種多様なジャンルに対応できるシンバルが作られています。覚えるのが少し難しいかもしれませんが、役立つ時は必ず来ると思いますので、ぜひ覚えておきましょう。
配合比率に関しては解説しないと上述しましたが、やはり気になりますよね?ここで簡単に解説したいと思います!
まず、シンバルを作る合金の金属は「銅」と「錫」がメインとなっています。「銅:錫=80:20」の「B20ブロンズ」や「銅:錫=92:8」の「B8ブロンズ」などが挙げられます。B20ブロンズは「キャストシンバル」、B8ブロンズは「シートシンバル」に使用される事が多いとも言われています。銅にも種類があり純粋な「銅(コパー)」、銅と錫の合金である「青銅(ブロンズ)」、銅と亜鉛の合金である「黄銅(ブラス)」が存在します。低価格シンバルを作る場合、青銅よりもコストがかからないため、黄銅を使用する場合もあります。また、銅や錫以外の「銀」や「亜鉛」「ニッケル」などを配合する場合もあり、メーカー毎にラーメン屋や鰻屋のような秘伝の配合比率が存在しています。金属の配合比率に関しては、蘊蓄、豆知識程度で覚えてください!
シンバルを製造するメーカーは聖地でもあるトルコに多いですが、アメリカ、スイス、ドイツ、日本、中国など世界各地で作られています。メーカー毎に特徴がはっきりしていますので、自身の求める「サウンド」を選ぶ参考にしてください。主流なメーカーをまとめましたが、他にも多くのメーカーが存在します。セッティングの際、メーカーやモデルを揃えることが多いですが、必ずしもそういったルールがある訳ではありません。
シンバル界のキングオブキング。シンバルを語る上で絶対に避けては通れないのが「Zildjian」です。シンバルの父「アヴェディス・ジルジャン」がいなければこの世にシンバルは存在しなかったかもしれません。総初期から現代まで高水準のクオリティを維持するだけでなく、ユーザーの需要に応じた様々な種類のシンバルを世の中に送り続けています。どのメーカーが良いか迷った際は「Zildjian」なら間違いないでしょう。
「Zildjian」から派生したメーカーの1つが「SABIAN」です。1981年にカナダで設立されました。設立当初から伝統を重んじるZildjianとは対照的に新しいチャレンジをし続け、現在では世界4大シンバルメーカーの1つとも言われています。オールジャンルを網羅できるラインナップがありますが、「AA」「AAX」シリーズは「Red Hot Chili Peppers」の「チャド・スミス」氏をはじめ、多くのロックドラマーに愛されています。
こちらも世界4大シンバルメーカーの一角である「Paiste」は現在ではスイスのシンバルメーカーというイメージが強いですが、1901年にロシアで誕生しました。その後エストニア、ポーランド、ドイツと移り渡り、現在はスイスとアメリカに会社、工場を持っています。「Led Zeppelin」のドラマー「ジョン・ボーナム」氏が使用していた「2002」シリーズはとても有名です。ラインナップのほとんどが「シートシンバル」なのも特徴の1つです。
かつて「Zildjian」「SABIAN」「Paiste」が世界3大シンバルメーカーと呼ばれていましたが、近年非常に人気が高まり世界4大メーカーとして加わったのが、1951年にドイツで設立された「MEINL」です。同じくドイツのドラムメーカー「SONOR」との相性が良く、この組み合わせで使用しているドラマーも多く、人気が伺えます。メタル系の轟音系シンバルからジャズ、フュージョンなどで使用できるダークなシンバルも多く作っています。
https://www.youtube.com/watch?v=DDIGrvG6lL8
「Istanbul」も「Zildjian」から派生したメーカーの1つです。ジルジャンのシンバル工場で職人をしていた「アゴップ・トムルジュク」氏は1980年にIstanbulの前身となる「Zilciler」社を立ち上げました。現在は創始者2人の名前を冠した「Istanbul Agop」と「Istanbul Mehmet」の2社に分裂しています。ハンドハンマリングや昔ながらの製法にこだわりが随所に見られるTHE・トルコシンバルと言えるでしょう。
「Istanbul」で修行を積んだ「ハサン・セケル」氏、「イブラヒム・ヤキジ」氏、「ハサン・オズデミール」氏の3人のシンバル職人が1996年に設立したのが「Bosphorus」です。現在ではトルコで最も経験のある職人と呼ばれています。驚きなのは工房自体も洞窟の中にあり、昔ながらの製法で当時のサウンドを再現しています。ダークで深みのあるサウンドはジャズやフュージョンなどに適しています。
「UFIP」は1931年にイタリアで設立されました。遠心力を用いた独自のキャストシンバル製法を特徴としており、多くの工程を手作業で行うこだわりを持っています。カホンプレイヤーが「スプラッシュシンバル」をハンドクラッシュとして良く使用していますが、それ以外のシンバルも高いクオリティを誇ります。どちらかと言えばモダンなサウンドが特徴と言えるでしょう。
国内唯一のシンバルメーカーとして有名な「小出」は大阪に工場を持ち、2004年からシンバル制作を始めています。日本人ドラマーに多く愛用されていますが、海外にも進出し、雑誌で特集を組まれるなど今後にも期待大のメーカーです。日本人の職人気質な部分がシンバル制作にも現れトルコ系をはじめ海外のシンバルにも引けを取らないクオリティを誇ります。レスポンスが良く、クリアで抜けの良いサウンドが特徴です。
特にシンバルは色々な音を聞くことで違いが分かるようになる楽器ですので、是非自分自身でも調べてみたり、試奏することをおすすめします。自分だけのオリジリティ溢れたシンバルセットを組んでみてください。
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