アコースティックドラムや一部の電子ドラムでの演奏を録音する際にはオーディオインターフェイスが必要不可欠ですが、モデルによって音質の違いや繋げるマイクやスピーカー、ヘッドホンなどの数が異なります。数多くのオーディオインターフェイスから選ぶのはとても大変ですが、スペックの見方を知ることができれば自信に合ったモデルを選ぶことができるでしょう。この記事ではドラムの録音に向いているオーディオインターフェイスの選び方とおすすめ製品を紹介していきます。
「オーディオインターフェイス」とは音声信号を入出力する接続点を意味しますが、ほとんどの場合アナログの音声信号をPCなどのデジタル機器へ入出力する機材を指し、アナログとデジタルの変換器と考えると分かりやすいです。マイクで拾った音声やエレキギターの音を取り込むことが可能になり、PCやiPadなどで楽曲制作を行うことが多い現代においては非常に重要な機材と言えます。その他にも複数のマイクや楽器を繋いだり、レイテンシー(遅延)の改善、高音質でのモニタリングが可能になることもメリットの1つです。(オーディオインターフェイスの種類や出力先のモニタースピーカーやヘッドホンにも影響されます。)
USB(一部のモデルはThunderbolt)端子によってPCと接続しますが、2.0、3.0、Type-Cなど規格の違いがあるため、購入する際には自身のPCと接続できるかの確認は必須です。
「AIF」や「オーディオI/F」、「オーディオI/O」と略されていることもあります。
どんな「オーディオインターフェイス」がドラムに適しているのか、その選び方を解説していきます。
一番重要なポイントは「使用用途」です。レコーディング(録音)やストリーミング(配信)、作編曲など、”どのような目的でオーディオインターフェイスを使用するか”を決めてから選び始めましょう。どのインターフェイスを選んでもそれぞれの目的で使用することは可能ですが、使いやすさや音質などにこだわりたい場合はしっかり選ぶことをおすすめします。
ドラマーがオーディオインターフェイスを必要とする場面で一番多いのは「レコーディング」です。アコースティックドラムは完全なアコースティック楽器のため、マイクで拾った音をオーディオインターフェイスで変換し、PCに取り込む必要があります。ハイハットやスネア、バスドラムなど楽器1つに対して1本〜2本、オーバーヘッド(エアー)用に2本〜4本使用することもあるため、入力数の多いオーディオインターフェイスがおすすめです。
昨今では「ストリーミング」で活躍しているドラマーも数多くいます。オーディオインターフェイスを内蔵している電子ドラムを使用するのが最も容易ですが、”トーク用のマイクを繋ぐ、音量の調節する、外部音源を流す場合に必要なループバック機能”などオーディオインターフェイスを使用することでアコースティックドラムはもちろん、電子ドラムでのストリーミングもより手軽で便利に行うことが可能になります。
MIDIキーボードなどを用いた打ち込みをメインに「作編曲」している方には高音質でモニタリングできるオーディオインターフェイスが適しています。入力数が多いのに越したことはありませんが、コンパクトなモデルも多くリリースされていますので、録音用、PCでの作業用と使い分ける場合にもおすすめです。
ドラマーの「レコーディング(録音)」用のオーディオインターフェイスには入力数の多いものが適しており、少なくとも8ch以上の入力を搭載したモデルがおすすめです。”価格重視で入力数が少ないものを購入してしまい、後に買い替えが必要になる”というのは良くあるケースのため、しっかり把握しておきましょう。入力端子にはノイズが少なく高音質で入力できるバランス接続タイプの「XLR」端子、「TRS」端子、エレキギターなどを接続するアンバランス接続タイプの「TS」端子などがありますので、ノイズに強いバランス接続が行えるケーブルを選ぶことも重要です。
「パラ出し」とは楽器毎に1つずつトラックを割り当て出力することを指し、「マルチトラックレコーディング」は楽器毎に1つずつトラックを割り当てて録音することを意味します。ドラムの場合は特に楽器数が多いため、音質の良い録音を目指すのであれば、この「マルチトラックレコーディング」が必須です。オーディオインターフェイスのスペック表には「〇〇IN/〇〇OUT」と記載されていますが、例えば「8IN/8OUT」と書かれている場合は8個の入出力、つまり8トラック同時の録音が可能ということになります。逆に「2IN/2OUT」の場合はマイクなどアナログで繋げる入力数がいくら多くてもPC上に取り込む際に1つのステレオトラックにまとめられてしまい、マルチトラックレコーディングができないため注意が必要です。
「オーディオインターフェイス」の音質はスペック(仕様)での比較が難しいですが、価格と比例することがほとんどのため、価格が高い=音質が良いという考え方で問題ありません。例えば¥20,000〜¥25,000以下のモデルはメーカーが違えど使用している部品がほとんど同じ品質のためそこまで音質の違いはありませんが、¥30,000以上のモデルから音質の違いを実感することができます。
スペック(仕様)表には「最大〇〇bit / 〇〇〇kHz」と表記されており、「bit」は「量子化ビット数」を表し、数値が高くなるほどノイズ対策に優れ、滑らかなサウンドになります。「kHz」は「サンプリング周波数」を表し、数値が高いほど変換処理能力が高くなるため、細かい部分まで精細に処理できるようになりますが、現在販売されているオーディオインターフェイスは「16〜24bit / 96kHz〜192kHz」である場合が多く、選ぶ際には念の為チェックする程度で問題ありません。
ドラムに適したオーディオインターフェイスのおすすめ製品を「簡易タイプ」と「本格派タイプ」の2つのタイプに分けて紹介していきます。
画像 | 製品 | 入力数 | 出力数 | サンプリング周波数 | 量子化bit数 | USB | 電源 | 重さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
YAMAHA / AG06MK2 | 2 | 2 | 192kHz | 24bit | TypeC 2IN/2OUT |
USB TypeC (5VDC,900mA) |
0.9Kg | |
YAMAHA / MG10XU | 4 | 3 | 192kHz | 24bit | 2.0 2IN/2OUT |
PA-10 (AC100V,50Hz/60Hz) |
2.1Kg | |
YAMAHA / EAD10 | 2 | 1 | 44.1kHz | 16bit | 2.0 | PA-150B (DC12V,1.5A) |
約1.2Kg(合計) | |
TASCAM / US-16×08 | 16 | 8 | 44.1/48/88.2/96kHz | 16/24bit | 2.0 16IN/8OUT |
専用ACアダプター | 2.8Kg | |
MOTU / 8pre USB | 8 | 2 | 96kHz | 24bit | 2.0 16IN/12OUT |
専用アダプター (100V,50/60Hz) |
1.95Kg | |
YAMAHA / TF1 | 16 | 16 | 48kHz | 24bit | 2.0 34IN/34OUT |
専用電源コード AC100V,50/60Hz |
13.5Kg | |
RME / Fireface 802 FS | 12 | 8 | 192kHz | 48bit | 2.0 30IN/30OUT |
専用ケーブル | 2.8kg |
まずはコストパフォーマンスに優れ、設定や繋ぎ方もそこまで複雑ではない、特に初心者にもおすすめなオーディオインターフェイスを紹介します。
「ストリーミング」に特化したオーディオインターフェイス「YAMAHA / AG06MK2」は楽器プレイヤー以外の方にも人気の高いモデルであり、ストリーマー(配信者)はまず候補に入れておくことをおすすめします。アコースティックドラムの場合はトーク用のマイク、ドラム用のエアーマイクの2つを入力端子に繋ぎ、電子ドラムの場合は、ステレオアウトからオーディオケーブルなどでライン入力に繋ぐことで、トーク用のマイクとのボリューム調整もしやすくなるのでおすすめです。ワンタッチで音声を切れるミュートボタンやPCやスマホで再生した音楽も合わせて配信に載せることができるループバック機能も特徴となっています。
マイク入力数 | 2 |
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出力数 | 2 |
サンプリング周波数 | 192kHz |
量子化ビット数 | 24bit |
USB | TypeC、2IN/2OUT |
電源 | USB TypeC(5VDC,900mA) |
重さ | 0.9Kg |
「YAMAHA / MG10XU」はモノラル4chの入力端子を持つミキサー兼オーディオインターフェイスです。2IN/2OUTのため、マルチトラックレコーディングはできませんが、4つのマイク入力端子があるためスネア、バスドラム、オーバーヘッド(×2)のセッティングでレコーディングが可能であり、D-PREマイクプリアンプによって音質も良くコストパフォーマンスに優れています。イコライザーやコンプレッサー、デジタルエフェクトなども内蔵されているため、ある程度音色を整えた状態でレコーディングできるのも強みの1つです。
マイク入力数 | 4 |
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出力数 | 3 |
サンプリング周波数 | 192kHz |
量子化ビット数 | 24bit |
USB | 2.0、2IN/2OUT |
電源 | PA-10(AC100V,50Hz/60Hz) |
重さ | 2.1Kg |
練習時のモニターからトリガー&モジュールとしても活用できる「YAMAHA / EAD10」はレコーディングやストリーミングにも適しています。ドラム専用に設計されているため音質も良く、AUXやUSBでスマホとの連携や無料アプリ「Rec’n’Share」を使用することで録音や撮影、編集も簡単に行うことができるため、アコースティックドラムをメインに使用している方は1台もっておいても損はしない機材です。トークバックファンクション機能を使えば演奏者の声を収音することも可能のため、簡易的なレコーディング、ストリーミング、もしくはその両方をしてみたい方におすすめです。
マイク入力数 | 2(センサーユニット内蔵) |
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出力数 | 1 |
サンプリング周波数 | 44.1kHz |
量子化ビット数 | 16bit |
USB | 2.0 |
電源 | PA-150B(DC12V,1.5A) |
重さ | 約1.2Kg(合計) |
ここでは楽器毎にトラックを分けて録音するマルチトラックレコーディングで本格的なレコーディングを行いたい方におすすめなモデルを紹介します。
コストパフォーマンスを重視し、最も手軽にマルチトラックレコーディングを行うなら「TASCAM / US-16×08」がおすすめです。コンデンサーマイクも使用可能なファンタム電源の供給に対応したXLR入力端子を8個搭載し、バランス入力は合計16個備えています。Lightning-USBカメラアダプターをしようすればiPadでも使用できるのも良いポイントで、Ultra-HDDAマイクプリアンプによる音質やDSPミキサーによるイコライジングも容易にできるため、初心者でも安心して使用できるオーディオインターフェイスです。
マイク入力数 | 16 |
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出力数 | 8 |
サンプリング周波数 | 44.1/48/88.2/96kHz |
量子化ビット数 | 16/24bit |
USB | 2.0、16IN/8OUT |
電源 | 専用ACアダプター |
重さ | 2.8Kg |
「MOTU / 8pre USB」は8つのXLR端子を搭載し、他のMOTU製品の拡張機としても使用できるオーディオインターフェイスです。高性能マイクプリアンプによって高音質での録音が可能であり、専用のCueMix DSPを使用すれば最新のデジタルミキサー同様のパフォーマンスを実現しています。同時使用できるマイク本数は8本ですが、ジャズキットやコンパクトキットなど使用するタムなどの点数が少ない場合はこのインターフェイスでも十分ハイクオリティなレコーディングが可能です。
マイク入力数 | 8 |
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出力数 | 2 |
サンプリング周波数 | 96kHz |
量子化ビット数 | 24bit |
USB | 2.0、16IN/12OUT |
電源 | 専用アダプター(100V,50/60Hz) |
重さ | 1.95Kg |
オーディオインターフェイスを内蔵したデジタルミキサー「YAMAHA / TF1」はプロの現場でも活躍している本格的な機材の1つです。タッチパネルによって今までにないストレスフリーな操作を実現し、緻密な調整をする際にはノブ操作も可能になっています。マイク入力端子は16個搭載しており、どのようなドラムセットのレコーディングでも対応可能、レコーディング以外ではライブなどの現場でも活躍できるため、価格は上がりますが、非常におすすめなモデルです。
マイク入力数 | 16 |
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出力数 | 16 |
サンプリング周波数 | 48kHz |
量子化ビット数 | 24bit |
USB | 2.0、34IN/34OUT |
電源 | AC100V,50/60Hz |
重さ | 13.5Kg |
「RME / Fireface 802 FS」は名機と呼ばれた「Fireface 800」の後継機種であり、オーディオインターフェイスの最高峰です。ADATもしくはSPDIFオプティカル端子を含め最大30入出力が可能、録音・再生時の音質、レイテンシーなど全てにおいて高いクオリティを持っています。デジタル・コンソールに匹敵するミキサー機能が内蔵し、レコーディングはもちろん、ライブからクラシックのコンサートまで対応できるオーディオインターフェイスです。使いこなすのは難しいですが、ハイエンドモデルが欲しいという方は候補に入れてみてはいかがでしょうか。
マイク入力数 | 12 |
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出力数 | 8 |
サンプリング周波数 | 192kHz |
量子化ビット数 | 24bit |
USB | 2.0、30IN/30OUT |
電源 | 専用ケーブル |
重さ | 2.8Kg |
ドラム向けのオーディオインターフェイスは他の楽器よりも選ぶのが難しい傾向にありますが、今回紹介した機材を1台持っていればドラムだけでなく他の楽器やWEB会議などでも使用できますので、必要な機能を把握して自分自身にあったオーディオインターフェイスを選びましょう。
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