ドラム譜の読み方、書き方《②ドラム譜の基本編》[記事公開日]2023年2月26日
[最終更新日]2024年8月23日

ドラム譜は他楽器と違い、音符に音階の概念がなく、各音階が演奏する楽器に対応している様式をとっています。ピアノやギターなど楽譜を読める方にとっては少し違和感があるかもしれませんが、まだ楽譜を読んだことの無い方にとっては非常に入りやすいため、「難しそう」という先入観を捨ててお読みください。

こちらの記事を先に読んでおくことをおすすめします。

ドラム譜の読み方、書き方《①楽譜の基本編》


  1. ドラム譜の読み方を覚えよう!
  2. 実際にドラム譜を読んでみよう!
  3. 自分でドラム譜を書いてみるには?

ドラム譜の読み方を覚えよう!

ドラム譜もピアノやギターなど他楽器と同じく5線譜がベースとなっていますが、記載される音符は音階の意味合いを持ちません。まずは5線上の「どの位置」に「どの記号」が記載されると「どの楽器」を演奏するのかを確認していきましょう。そこまで音符や記号の種類は多く無いため、早めに覚えておきましょう。また、ここに記載しているのはポピュラーなものになりますが、楽譜によっては音符の位置や記号が異なる場合がありますので、ご注意ください。
※ヘ音記号を使用する前提で解説していきます。

ドラム類の表記方法

スネアやタム、バスドラムなどのドラム類は通常の音符を使用します。タム類は場合によって異なる位置に記載される場合もありますが、バスドラム、スネアドラムに関してはこの位置以外で表記することはありません。

バスドラム A(ラ)
スネアドラム E(ミ)
ハイタム G(ソ)
ロータム F(ファ)
フロアタム ド(C)

シンバル類の表記方法

ハイハット、クラッシュ、ライドなどのシンバル類は「×」で表記することが多く、ハイハット、クラッシュシンバルはB(シ)の位置に記載しますが、異なる位置や記号を使用する場合もあります。ハイハットクローズ(ハイハットペダルを踏んで閉じている状態)は音符の上に何も表記しないか「+」や「H.H.close」などで表記され、オープンは「○」や「H.H.open」で表記されています。ハイハットペダルのみを踏むことで演奏する「フットハイハット」はB(シ)の位置に記載します。音符の上に「>(アクセントマーク)」を付けるとクラッシュシンバルを意味し、ライドシンバルはD(レ)の位置に記載することで他シンバルと区別しています。

ハイハット B(シ)
フットハイハット A(ラ)
クラッシュシンバル B(シ)
ライドシンバル D(レ)

その他、特殊な例の表記方法

あまり多くは見られませんが、一部の特殊な表記を紹介していきます。スネアドラムと同じ位置に「×」が記載されている場合は「クローズドリムショット(スネアドラムのフープのみを叩く奏法)」を意味し、タムやフロアタムが複数ある場合は記載する位置を変えて表したりします。ライドシンバルのカップ(ベル)を示す場合も同様に位置を変えたり、音符を「○」で囲む、「×」ではなく「◇」を使用するなど、出版している楽譜メーカー等の作成者によって僅かながら差があります。基本的には楽譜の前ページに音符と楽器の対応表が記載されている場合がほとんどですので、見ておくとスムーズです。記載がない場合などは実際に曲を聞いて確認する必要があります。
※ここで紹介したものは一部であり、他にも異なる表記をしている場合もあります。

実音のイメージをしてみよう!

これは最もスタンダードな8ビートのフレーズですが、ハイハットを「チ」、スネアドラムを「タ」、バスドラムを「ド」に置き換えて見てみると音のイメージがしやすくなります。楽譜を読んだだけでドラムのフレーズが頭に流れてくるようになれば譜読みをマスターしたと言ってよいでしょう。

シンコペーション(食い)時の表記はタイを使用する

「シンコペーション」とは強拍と弱拍のパターンを入れ替えることで単調なリズムに変化をもたらす奏法を指し、現代音楽ではほとんどの曲で採用されていると言っても良いほどポピュラーなものとなっており、ドラムでも同様のことが言えます。強拍=表拍、弱拍=裏拍と言い換えられますので、裏拍にアクセントを入れると考えれば理解しやすいでしょう。ドラム譜ではシンコペーションがある場合、「2つの音符を繋げて1つの音符として演奏する」ことを示す記号である「タイ」を使用して記載されており、ハイハットのオープンクローズが続く際やシンコペーションのあるバスドラムパターンに良く使用されています。本来演奏しない音符を演奏してしまうと全く違うパターンになってしまうため、注意が必要な記号の1つです。作成者によっては演奏しない音符をそもそも記載しないということもありますし、自身で使用する譜面を作成する場合は書く必要性はそこまで高くはありません。

実際にドラム譜を読んでみよう!

それでは《初心者必見!》ドラム譜の読み方、書き方《①楽譜の基本編》で解説した様々な記号とこの記事で紹介したドラム譜の読み方を合わせて実際のドラム譜を読んでみましょう。譜読み上達のコツはなんと言っても経験することなので、自分の好きなバンドの譜面などをたくさん読んで慣れていってください。やればやるほどスキルアップしていくことが分かるので、達成感も味わえて楽しいと思えるでしょう。

テスト問題に挑戦!

こちらのドラム譜がどういう順番で進んでいくのかを小節をA、B、C表記にしていますので、「A→B→C」のように流れを考えてみてください。ドラムが叩ける方は実際に叩いてみても良いですね。下へスクロールすると答え合わせができます。

答え合わせと解説

テスト問題はいかがでしたか?分からなかった方も答えを見ながらもう一度繰り返し確認することで理解が深まると思います。それではまず答え合わせからしていきましょう。

答え

A→B→C→D→C→E→F→A→B→C→E→F→G→H→G→I→J→K

解説

まず譜面を読み始める前に音部記号などをチェックしましょう。ヘ音記号ということから低音楽器の楽譜ということが分かりますね。拍子は4/4でテンポ(BPM)は140です。
小節を数えることも重要なので小節数で解説します。楽譜自体は11小節で表記されていますが、実際に演奏する長さは18小節になります。

A→B→Cまで
1小節目(A)1拍目のシンバルはアクセント記号が付いているのでクラッシュシンバルとバスドラムを同時に鳴らして演奏が始まります。1小節目(A)4拍目の裏から2小節目(B)の1拍目にかけてのバスドラムはシンコペーションになっているので2小節目(B)1拍目に表記されているバスドラムは演奏しません。3小節目(C)にはリピート記号が書かれているのを見逃さないようにしてください。

D→C→E→F→A→B→C→E→Fまで
4小節目(D)にはシミレが表記されているため、3小節目と同じパターンになり、更に1番カッコがついていますが、最初に通るため普通に演奏します。リピート記号が書かれていますので3小節目(C)に戻った後、1番カッコは演奏済みのため、4小節目(D)を飛ばして2番カッコが記載された5小節目(E)に移ります。
5小節目(E)はパターンが変わり「倍テン」や「ダブルタイム」と呼ばれるパターンになっています。(「倍テンや「ダブルタイム」に関してや2拍目、4拍目にあるバスドラムの表記方法の違いに関しても別の記事で詳しく解説します。)6小節目(F)の3拍目からフィルインが入り、D.C.(曲頭に戻る)します。
1小節目(A)に戻り先ほどまでと同じ流れを辿ります。4小節目(D)は再度飛ばして5小節目(E)、6小節目(F)を経て7小節目(G)に進みます。に移ります。1番カッコは再度飛ばしますが、2番カッコは2回目の繰り替えしでも演奏します。(2.3番カッコとして表記されていることもあります。)

G→H→G→I→J→Kまで
7小節目(G)にセーニョ、小節終わりにTo Codaがついていることを見逃さないようにしてください。8小節目(H)までは普通に進み、D.S. al Codaによって7小節目(G)1拍目に戻り、To Codaによって9小節目(I)に飛びます。少し複雑ですが、1つ1つの記号の意味を理解しておけば決して難しくありません。
9小節目(I)、10小節目(J)、11小節目(K)は普通に演奏し、11小節目(K)の1拍目にクラッシュシンバルとバスドラムを鳴らし、小節終わりにはFine、フェルマータがありますのでここで終わります。(4分音符の後に付点2分休符で記載していますが、クラッシュシンバルとバスドラムを全音符で記載する場合もあります。)

3:自分でドラム譜を書いてみるには?

ドラム譜は読むだけでなく自分自身で書けるようになると更に利便性を感じます。曲を覚えたり、バンドで合わせている際にアレンジを変えてみたりする際に活用でき、スタジオミュージシャンやドラム講師を目指している方にとってはほぼ必須のスキルになります。ドラム譜の読み書きはメリットしかありませんので、覚えておくに越したことはありません。

手書き、ソフトどちらでもOK!

ドラム譜作成には2つの方法がありますので紹介していきます。

5線紙を使用して手書きで作成する

手書きでの5線紙作成はすぐに行えることが最大のメリットで、5線紙とペンがあればどこでも作成できますし、持ち運びなどの移動も簡単です。PCスキルが要らないので誰にでもおすすめ出来る方法でもあります。反対にデメリットとしては音符や記号などをバランス良く、綺麗に書けるようになるためには練習が必要であり、自分以外に見せた際に見にくいと思われてしまう、なんらかの理由で譜面を紛失、破損してしまった場合書き直しが必要などがあります。

手書きで作成する場合の簡単な方法を少し紹介

用意するものは5線紙、シャープペン、ボールペン、消しゴム、定規がおすすめです。


まず初めに5線紙に小節線を書いていきます。5線紙のサイズやどのくらいの大きさでドラム譜を書きたいかによって小節線の数を決めましょう。既に曲のサイズが分かっていれば復縦線や終止線を記入しておくのもいいでしょう。この時に定規をしようすると綺麗に線が引けます。また、ボールペンなど油性ペンをしようすることで消しゴムで修正する際にも消えないのでおすすめです。

次に音部記号と表し記号を記載。

バランス良く書くにはハイハットから書いていきます。まずは1拍目、3拍目の4分音符を記入。

次に2拍目、4拍目の4分音符を均等に配置。

更に8分音符を隙間に記入していきます。

スネアドラムの位置が決まっていればこの時にハイハットの音符と一緒に繋げて記入しておきます。

最後にバスドラムと休符を記入して完了。バランス良く配置できました。

手書きでは同じパターンを書くのが大変なので、シミレを多用しましょう。

若干パターンが違う程度であればアクセントだけ書き込むなどでもOK。(自分で見る専用に限ります。)

こちらも自分で見る専用の書き方ですが、音符の部分を簡略化して書いています。結局のところ自分1人用であればあとで見返して分かるなら何でもOKです。

PCやタブレットのソフトで作成する

PCやタブレットで作成する場合、誰でも綺麗な見やすい譜面を作成できることが最大のメリットです。操作などを覚える手間はかかりますが、覚えてしまえば手書きよりも効率よく作成でき、時間短縮にも繋がります。データとして残しておけばまた編集や印刷等ができるのも良いポイントです。デメリットとしてはPCやタブレットが無いと作成できない、操作スキルが必要といった点が挙げられます。PCやタブレットへの苦手意識が無い方にはこちらの方法がおすすめです。

PC、タブレットで作成時の大まかな手順
まずPCやタブレットを準備しましょう。スペックなどは最低限のものでも動かせますが、各ソフトには「最低動作環境」というものが記載、説明されていますので良く確認し、対応しているものを使用してください。例えば有名な無料楽譜作成ソフト「MuseScore」はメモリ(RAM)が8GB、プロセッサ(CPU)が4コア、ディスプレイのピクセル解像度が1280×720(もしくは縮尺相当)となっています。

次に楽譜作成ソフトを購入、ダウンロード後インストールします。各ソフトメーカーのHPに記載されている説明を読みながら行いましょう。

ソフトを立ち上げて楽譜作成。これも各ソフトによって作成方法が異なりますので、操作方法を覚える必要があります。メーカーサイトだけでは分かりにくい場合もありますので、Youtube等で調べることをおすすめします。

出来上がった楽譜を保存、印刷する。PCに保存したり、オンライン上に保存可能な場合もあり、非常に便利です。アカウントを作成しておけば別の場所でログインし、開くことも可能。(ソフトの機能によります。)最近ではスタジオやライブでもタブレットをそのまま楽譜として使用することが多くなってきています。楽譜と違い暗いステージでも見やすいのがメリットです。

おすすめなドラム譜作成ソフト紹介

PCやタブレットで使用できるおすすめなドラム譜作成ソフトを紹介します。基本的な必要スペックや特徴を解説しますので、自分自身に合ったソフトを選んでみてください。

Flat

現在最も人気な楽譜作成ソフト、アプリの1つとして有名なのが「Flat」です。PCの場合Google Chrome等のブラウザ内でオンラインで楽譜作成を行うことができ、タブレットではアプリをダウンロードして使用します。無料で使用できますので手軽に始められ、操作性などが気に入った場合はサブスクリプションや買い切り型の購入をおすすめします。有料版では120種類以上の楽器が使用可能、スコア作成数が上限無し、その他にも自分好みに使用しやすいカスタマイズ出来るのが強みです。月額料金、年間料金、永久料金の3つのプランがありますので自分自身に合わせて選んでください。
Flat Official Site

最低動作環境

PC インターネット接続可能な以下のブラウザ
()内は最低必須バージョン
Google Chrome(49)
Chromium(49)
Firefox(31)
Opera(36)
Safari(7.1)
Microsoft Edge(全バージョン)
iOS 13.0以降
android 7.0 以上

MuseScore

「MuseScore」は世界的に有名な無料楽譜制作ソフトの1つであり、PCで楽譜作成する方には非常におすすめなソフトです。無料でありながら基本的な楽譜作成ソフトと同じように使用でき、オンライン上への保存も可能、自身で作成した楽譜を公開したり、他の方が公開している楽譜を見ることもできます。有料版も用意されており、広告が消える、ミキサー・ツール昨日の拡張、オフラインでの再生などの機能が使用できます。無料で出来ることが多いので初めてドラム譜を作成する場合はこのソフトがおすすめです。iOS、androidアプリもありますが、見る専用であり、楽譜作成はできないため動作環境は省略します。
MuseScore Official Site

最低動作環境

PC OS:Windows10/MacOS11以上
ストレージ:500MB
メモリ:8GB
CPU:4コア
ディスプレイ:ピクセル解像度1280×720(もしくは縮尺相当)

Sibelius

「Sibelius」で作れない楽譜はないといわれるほど、人気かつ有名であり、音楽業界でもスタンダードになっている楽譜作成ソフトです。作成するスピード、効率は最速と言え、ストレスなく完璧なドラム譜が作成可能です。「Finale」も世界的に有名な楽譜作成ソフトであり、よく「Sibelius」と比較されます。「Finale」はオーケストラやドラム以外の楽器の譜面を作る際に有効ですが、ドラム譜においては時間効率が良く使いやすい「Sibelius」をおすすめします。無料版である「Sibelius First」、有料版の「Sibelius Artist」、「Sibelius Ultimate」から選べますが、最もランクの高い「Sibelius Ultimate」がおすすめです。価格は他のソフトよりも高いのですが、その分の利便性は間違いなくあるでしょう。androidは未対応ですが、iPad等での使いやすさもポイントです。
Avid Official Site

最低動作環境

PC OS:Windows10/MacOS10.13以上
CPU:2コア2.5GHz
ストレージ:36GB
メモリ:4GB
iOS 13.4以降

この記事で紹介した他にも特殊なリズムパターンや記号や記法などもありますが、ここまで読んでいただいた方は基本的な楽譜の読み方、ドラム譜の読み方や書き方はマスター出来ているでしょう。更にドラム譜をマスターしたい方向けに現在記事を作成していますので楽しみにお待ちください。

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