ドラムセットを含む打楽器全般を叩いて演奏するための棒状のものを「ドラムスティック」または「スティック」と呼びます。ほとんどが木製ですが、中には樹脂製や金属製のものも。日本名は「バチ」、漢字は「桴」が当てられます。「撥」という漢字もありますが、こちらは三味線を弾くための道具なので別物ですね。さまざまな長さ/太さ/形がありますが、音色が変わるだけでなく演奏のしやすさにも影響が出ますので、シグネチャーモデル(有名ドラマーの特注モデル)が作られるのもそういった理由からです。
ドラムスティックはチップ、ショルダー、シャフト、グリップの4つの部分に分けられます。
チップの素材は木製とナイロン製のものが多く、木製はスティックを作る工程の中で削りだして作られます。木製なので欠けてしまう事がありますが、音色やスティックのバウンドに影響が出るので交換の時期と考えてもよいでしょう。ナイロン製は密度の個体差がないので、音のバラつきがありません。しかしスティック本体との関係もあるので、一概には言えません。
ナイロンチップが発売された当初は演奏中にチップだけが抜けてしまうことがよくありましたが、現在は製作の技術も上がり抜けてしまうことはほぼなくなりました。
TAMA M214-B
どのような角度で叩いても打面への接地面が一定になるので、音にバラつきが少なくなります。
Ludwig L-SD1
特性は丸型と似ていますが、接地面が広くなるぶん大きな音が得られます。
TAMA H215-P
打面に当てる角度によって音色の変化をつけやすくなりますが、トレーニングが必要です。
TAMA H5B
涙型よりさらに音色の変化がありますが、よりトレーニングが必要です。
Wincent W-NT5A
チップがないスティックです。チップもショルダーもないので、ただの丸太棒のようです。パワーは出ますがコントロールが難しいので、初心者にはおススメしません。
ドラムスティックに用いられる木材は主に3種類。それぞれの音色は
オーク → ヒッコリー → メイプルの順で優しくなっていき、その差はドラムよりシンバルの方がわかりやすいでしょう。特にライドシンバルをチップでたたいてみるとよくわかります。
北米原産のクルミ科の樹木。スキー板や家具などの材料として有名です。もともと日本には自生しなかった樹木なので、日本名はありません。スティックの材料としては最もポピュラーで、耐久性が高いのが特徴です。突然折れてしまうことは少なく「ささくれる」ように削れていくことで強度を保っているようです。
日本名は「樫(かし)」。ヒッコリーに比べて重く、色は少し暗めです。重いぶん大きな音が得られます。徐々に削れて細くなっていきますが、突然折れてしまうこともあります。
日本名は「楓(かえで)」。ヒッコリーに比べて軽く、色は明るい茶色です。軽いので繊細な演奏ができますが、こちらもオークのように突然折れてしまうことがあります。
スティックの平均的なサイズは
です。
当たり前ですが、重いスティック(太い/長い)ほど音は大きくなりますし、軽いスティック(細い/短い)なら小さくなります。しかしドラムを始めたばかりの人が「俺はロックだぜ!だから太くて長いスティックを使うぜ!」と言って、いきなり重いスティックを選ぶのはあまりおススメできません。テンポの速い曲を無理やり演奏することで、手首や肘を痛めてしまう恐れがあるからです。またロックを演奏する時に「軽いスティックの方が手が速く動きそうだ」と言って、やたら軽いスティックを選ぶのも好ましくありません。軽いスティックで大きな音を出そうとすると余分なチカラが入ってしまい、逆に疲れてしまうことがあるからです。ですので、まずは平均的なサイズのスティックをおススメします。
この後スティックを販売する主なメーカーと、知っておくと便利な品番や定番商品を紹介します。
ドラムスティックをリリースする主なブランド、まずは海外のものから紹介していきます。
ティンパニ奏者の故Vic Firth氏により1963年に設立されました。
ドラマー兼ドラムショップオーナーの故Herb Brochstein氏により1957年に設立されました。
1623年にアベディスⅠ世によりトルコで設立されたシンバルメーカーで、1927年にアメリカに拠点を移しました。スティックの製造は1988年からスタートさせ、2010年にVic Firth社と合併しました。
1991年に大手スティックメーカーの下請け工場から自社ブランドを設立しました。
1992年に設立され、日本では2009年から販売が開始されています。
国内では主に以下のブランドがリリスしています。
1952年に設立されました。打楽器だけでなく、フルート製造でも有名です。
親会社の星野楽器グループは1908年に創業を始めていますが、TAMAのブランドは1962に設立されています。
1889年にオルガンの製造工場としてスタートしましたが、現在は楽器だけでなく発動機、スポーツ用品、リビング用品、半導体の製造もしています。ドラムは1967年に製造を開始しています。
1976年に設立され、ドラムは1981年に製造を開始しています。東京都杉並区に直営のショップがあります。
スティックは木製のためどうしても個体差があり、選ぶのに慎重になってしまいます。ただ最近は2本が既にペアに組んであり、重さやトーン(スティック自体を叩いたときに出る音程)はかなり近くなっていますので、選びやすくなってきています。それでもまだ個体差が気になる人や、一本一本バラバラに売られている時などのために、チェックポイントと選び方を紹介します。
「はかり」が置いてあるお店が増えてきているので、ぜひ量ってみてください。なければ左右一本ずつ手に持って、またそれらを持ち替えたりして調べます。
練習台などが置いてある場合は実際に叩いてみましょう。同じ重さでも部分的な密度の違いで、スティックを振った時の感触が変わることがあります。なければ空中で空振りして調べます。
※練習台にフープが付いている場合はリムを叩かないように気をつけましょう。
練習台などを叩いている時に左右の音のトーンが違うことに気づくことがあります。また、別の方法としてスティックを片手に一本持って軽く頭を叩き、同じ手でもう一本のスティックでも同じ箇所を叩きます。こうすることで二本のスティックの音程を比べることができます。強く叩くとかなり痛いのでほどほどに。
※スティック同士を叩いて音を鳴らすのは控えましょう。
平らな場所でスティックを転がすとスティックの反りがわかります。またスティック2本を束ねるように持ち、どちらか一本を平らな場所でスティックを転がすように回転させてもわかります。
※床でスティックを転がすのは控えましょう。
知っておくと良い品番
全メーカーではありませんが、各社が「標準」または「定番」として販売している品番があります。いくつかありますが、主な品番を紹介しましょう。 5A 「当社が標準だと思うサイズはコレです!」的なモデル。特に海外のメーカーが多く採用しているようです。メーカーによって多少の差はありますが、およそ似たようなサイズになっています。先ほど挙げたメーカーの「5A」をいくつか紹介します。(直径×長さ) ・VIC FIRTH 5A(14.4mm×407mm) ・PROMARK 5A(14mm×406mm) ・ZILDJIAN 5A(14.2mm×406mm) ・VATER 5A(14.5mm×406.4mm) ・WINCENT 5A(14.3mm×406mm) どのメーカーも直径14~14.5mm、長さ406mm前後でとても標準的なサイズになっていますね。どうしても迷った時はこの「5A」を選んでみてください。 5B 5Aと同じ長さですが、少しだけ太いモデルです。手が大きめの人や、音にパワーがほしい人におススメです。 7A 5Aと比べて少し細くて短いモデルです。女性や小中学生にも扱いやすいと思います。
もちろん「5A」は素晴らしいスティックですが、定番商品の中にも素晴らしいスティックはたくさんあります。初心者ドラマーさんにも安心しておススメできるスティックを紹介します。
PEARL 110HC
ベースになる「110」という品番は色々な材質で作られていて、「110」の後につくアルファベット(HCやSTHなど)で材質を見分けることができます。最初はヒッコリー材が扱いやすいと思いますので、品番の中に「H(ヒッコリーのこと)」が入っているものを選ぶと良いでしょう。元々はTOTOの元ドラマー、故Jeff Porcaroさんのシグネチャーモデルでしたが、評判が良かったので定番商品になりました。
PEARL 110シリーズを…
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TAMA H214B
ベースになるヒッコリー製の「H214」は3種類のチップから選ぶことが出来ます。Bは「ボール」で円筒型、Pは「ポピュラー」でティアドロップ型、Tは「トゥルー・ラウンド」で球状です。TAMAの公式サイトにはBが「ビギナーにもお勧めです」とありました。
TAMA H214シリーズを…
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プロドラマーの中には本人の使いやすいように特注して作ってもらった「シグネチャーモデル」が発売されている人もいます。その中でも扱いやすいスティックをピックアップしてみました。
見た目もクールな黒く塗装されたSteve Gadd氏のモデル。非常に平均的なサイズでヒッコリー製。チップは円筒形です。ロック~ジャズまで演奏するSteve Gadd氏のように、あらゆるジャンルにマッチするスティックです。
Steve Gadd performance video with the NEW Yamaha Recording Custom (HD)
1945年生まれ、ニューヨーク出身。ルーディメントをドラムセットに取り入れた「Gaddスタイル」とも呼ばれる革命的なドラミングは多くのドラマーに影響を与えています。現在でもジャズ、フュージョン、ロックなど、さまざまなジャンルで最高峰の演奏を届けてくれています。正確無比なマシンのような演奏だけでなく、時には感情むき出しの演奏も彼の魅力のひとつ。一見、正反対のように思えますが、彼がよくインタヴューで口にする「周りの音を聴く」「その音楽に合った最適な音を出す」の言葉を聞けば納得ですね。
Stebe Gaddモデルを…
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「手数王」菅沼孝三さんの正確無比なドラムを支えるこのスティック。素材はヒッコリーで、チップはナイロン製の円筒型。一般的な「5A」よりも少し長めな410mmです。
ZILDJIAN LAZLASKSを…
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いろいろと紹介してきましたが、最終的には「好み」や「慣れ」での判断になるでしょう。またテクニックが向上したり、叩き方が変わることでも演奏しやすいスティックは変わってくると思います。可能な範囲でいろいろなスティックを試してみてくださいね。
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