toolのドラマー「ダニー・ケアリー(Danny Carey)」

グラミー賞も受賞したプログレッシヴ・バンド「tool(トゥール)」のドラマーであるDanny Carey(ダニー・ケアリー、本名Daniel Edwin Carey)氏。バスケットボールが趣味でユニフォーム姿で演奏することも。高身長から繰り出されるパワフルかつ複雑なフレーズはダイナミックそのもの。トゥールでの活動を始め、多くのセッションに参加していることもあり、大変人気の高いドラマーです。

バイオグラフィー

1961年5月10日生 アメリカ・カンザス州ローレンス
10才からスネアドラムやボンゴなどの打楽器を習い始め、12才からドラムセットも演奏し始めます。高校でジャズバンドに参加したことでジャズに触れるようになり、大学に通うようになってからもジャズを演奏しました。大学では打楽器を科学、幾何学、形而上学の分野から研究し、これらがダニー独特のドラミングを形成することになります。大学卒業後しばらくして、ダニーはロサンゼルスに移りますが、そこでCarole King(キャロル・キング)のレコーディングに参加するなどのスタジオワークを始めます。

1990年にトゥールを結成し、2年後にメジャーデビュー。ヘヴィーなロックをベースとした難解で神秘的なトゥールの音楽は、その独特の世界観から人気を博し、世界的な成功を収めています。トゥールでの活動以外にセッションも数多くこなし、自身のバンド「volto!(ヴォルト!)」、アンダーグラウンドバンド「Pigmy Love Circus(ピグミー・ラブ・サーカス)」、トゥール関係者によるユニット「Zaum(ザウム)」、そしてKing Crinson(キング・クリムゾン)のギタリストAdrian Belew(エイドリアン・ブリュー)氏のソロアルバムへの参加など多岐にわたります。


Prison Sex(MV)/TOOL

プレイスタイル

パワフルで手数はやや多め。196cmの身長も相まって非常にダイナミックなドラミングです。音楽的には変拍子やポリリズムの多用、ロックだけでなくジャズや民族音楽のエッセンス、そして学術的~オカルト的な幅広い分野からのアプローチがベースになっており、それがダニー氏の大きな魅力でしょう。ちなみに変拍子を演奏するときはしっかりカウントしながら演奏するのではなく、その拍子のフィーリングに合わせて演奏しているのだとか。またドラムだけでなく、タブラ(インドの打楽器)も演奏し、楽曲の中にも取り入れています(ステージではタブラの音をはじめとするパーカッション類は電子ドラムで再現します)。


AENEMA(live)/TOOL

ドラムセッティング

アコースティックドラムは2バス+2タム+2フロアがベースになっていますが、時期や会場の大きさによって、少しずつ変えているようです。タム類がロートタムに変わったり、タムタムとロートタムが混在したりといった具合です。またエレクトリックドラムの導入にも積極的で、多い時には9個のパッドを使うこともあります。

使用機材

ドラム

ソナー社のドラムを長年使用しています。材質はビーチ(ブナ)やブビンガなど少し硬質の素材が好みのようです。またダニー氏の有名なドラムセットとして、パイステ社のシンバル2002シリーズ(ブロンズ合金)をリサイクルし、シェルに使用したものがあります。これは有名なドラムテック(ドラムの整備や修理、チューニングに関する専門的な技術者)であるJeff Ocheltree(ジェフ・オクルツリー)氏が制作した、世界に3組しかないドラムセットの中の1組です。

金色に輝くそのシェルは正に芸術品。とても美しい逸品ですが、材質としてはブロンズですので音色はいわゆる「爆音」。ダニーほどの体躯があってこそのドラムセットではないでしょうか。ただ重量がとても重く、バスドラムが1台約50kgあるそうです。運搬が大変なので、あまり頻繁には使われませんが、時々NAMMショーなどの楽器ショーで展示されることがあります。


ドラムもシンバルも金色!見応え抜群です。


電子ドラム

ダニー氏は早い時期から電子ドラムを導入しており、以前はSIMMONS(シモンズ)社を使用していましたが、2012年頃からは「mandala drum(マンダラ・ドラム)」を使用するようになりました。マンダラ・ドラムはグレーの9角形のパッドを製品として販売していますが、ダニーの使用するパッドは特別仕様で、パープルの7角形、そして幾何学図形がペイントされていて、とてもダニーらしさが出ています。最近では商品開発の部分でも協力しています。


mandala drumのサウンドチェック


シンバル

パイステ社のシンバルを使用しています。シリーズでは「2002」と「Signature」が中心で、時々「602」やエフェクト系のシリーズを取り入れているようです。サイズや種類は14インチのハイハット、18インチのクラッシュ、18~22インチのチャイナ、8~10インチのスプラッシュ、5.5~6.5インチのカップチャイムなどです。中でもライドシンバルは「Signature」シリーズの「Dry Ride」をベースにしたダニーのシグネチャーモデルで、サイズは22インチ。こちらもパープルのコーティングが施され、独特のルックスになっています。

ドラムヘッド

EVANS(エバンス)社を使用しています。
スネア:power center(表)、300(裏)
タム:G2 clear(表)、G1 clear(裏)
バスドラム:EQ3 clear(打面)、Retro Scree Mesh(フロント)

スティック

VIC FIRTH(ヴィック・ファース)社のシグネチャーモデルを使用しています。
太さ1.6cm(直径)×長さ41.91cm

アルバム

Ænima(「Æ」はAとEの合字)/トゥール

Ænima

1996年に発表されたトゥール2枚目のアルバム。米ビルボード200チャートで2位を獲得し、全米で300万枚以上の売り上げを記録しています。タイトル曲の「Ænima」は1997年のグラミー賞ベストメタルパフォーマンス賞を受賞しました。全体的な曲の雰囲気はHR/HMをベースにしたグランジ風ですが、曲の構成は複雑です。歌詞は難解で少々官能的な表現もあり、トゥールのイメージを作り上げています。MVはグロテスクな印象が強く、とっつきやすさはありません。

Incitare(インチターレ)/ヴォルト!

Ænima

2013年に発表されたヴォルト!のファーストアルバム。ロック寄りのフュージョンで、トゥールに比べるとかなり聴きやすい仕上がりですが、それでもなおプログレッシヴロックの印象は強く感じます。