「スネアドラム」はドラムセットの中でリズム、ビートの核となり、ポピュラー音楽では必須となる「バックビート」を生み出す最も重要と言える楽器です。この記事ではスネアドラムに関するパーツの名称や素材など、基礎知識を解説していきます。
ドラムセットに関しての解説はこちらの記事をお読みください。
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以下の記事とあわせて読むとより一層理解が深まります。
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1:スネアドラムとは? ├ サイズについて(口径と深さ) └ スネアドラムの歴史 2:スネアドラムを構成するパーツ 3:シェルに使われる素材 └ 木胴 ├ 金属胴 └ 特殊胴 4:主なスネアドラムメーカー ├ 国外メーカー └ 国内メーカー
「スネアドラム」とは木材や金属で作られた円筒状の胴体(シェル)の上下に、プラスチック製の皮(ヘッド)を張り、裏面に振動で響く金属ワイヤー(スナッピー)を張ることで、小気味良いスタッカート音を出す膜鳴楽器です。他のドラム類と明確に違うのはこの「スナッピー」サウンドによります。ドラムセットの中にも組み込まれていますが、マーチングやクラシックオーケストラ、パレード、ドラムラインなど、様々なジャンルにおいて単体でも使用されています。
両手に持ったドラムスティックやブラシ、ロッドなどを用いて演奏し、スネアドラム特有の演奏方法である高速で連打を行う「ロール」やフープを叩く「リムショット」など他の楽器に比べ、表現力の幅が広い事も特徴と言えます。ドラム演奏の基礎である「ルーディメンツ」はこのスネアドラムで練習、演奏します。また、ほとんどの現代音楽においては、4拍子の中で2拍目4拍目に入れる「バックビート」が楽曲のリズム形成やノリ、グルーヴに多大な影響を与えます。アンサンブルをする際、他の楽器陣もこのバックビートに合わせて演奏することが多いでしょう。
最初に全てのドラムに共通しているサイズ表記を説明します。「口径」「深さ」ともに全メーカー共通でインチ(”)表記です。国内では「口径” × 深さ”」で表記されていることがほとんどですが、国外の一部メーカーでは「深さ” × 口径”」という表記の場合もありますのでご注意ください。
「口径」はドラムの打面もしくは裏面の直径を指します。口径が大きくなると音量は上がり、ピッチは下がります。
スネアドラムは14インチがスタンダードサイズですが、13インチや15インチモデルも人気があります。また、10インチ程度のスネアドラムはサブスネアとしてハイハットの左側などにセッティングされる事もあります。
「深さ」はシェル(胴体部分)の長さを指します。浅い(短い)と倍音が少なく、レスポンスの早いキレのあるサウンドに、深い(長い)と倍音が増し、深みのある太い音になります。
スネアドラムの深さは5インチがスタンダードですが、近年では5.5インチを採用するメーカーが増えています。「深胴」と呼ばれるものは6.5インチもしくはそれ以上のサイズになり、大きいものでは9インチのスネアドラムも存在します。逆に3インチ程度の「浅胴」は「ピッコロスネア」と呼ばれます。
「スネアドラム」の起源は中世ヨーロッパに遡り、11-12インチ程度のドラムの底面に、1本の絹や麻で作られた糸をスナッピーとした「タボール(テイバー)」と呼ばれる膜鳴楽器が元祖とされています。当時は「パイプ」と呼ばれる笛とセットで演奏されていました。15世紀に入るとサイズが大きくなると共に円筒状に変わっていき、スイスの軍隊楽で演奏されるようになります。17世紀以降に更なる発展があり、スナッピーをネジで固定するようになったり、スネアドラム特有の音色の研究が行われていきました。この頃はまだ木製であり、金属製のスネアドラムが開発されたのは20世紀に入ってからです。ドラムセット黎明期からバスドラムと共にセットに組み込まれており、今では無くてはならない存在になっています。
ドラムセットの歴史に関してはこちらの記事を参考にしてください。
ドラムの歴史
そして現在では音楽ジャンルの発展と共に様々な素材が採用され、サイズや製法も多様化しています。数あるパーカッションの中でも、最も多くのラインナップを持っている楽器の1つと言って良いでしょう。
「スネアドラム」を構成するパーツの名称と役割を解説していきます。
打面側のヘッドを「バターヘッド(もしくはバターサイド)」と呼びます。ドラムスティックで直接叩く部分のため、特にアタック音に大きな影響がある部分です。特にスネアドラムのバターヘッドには様々な種類のヘッドが用意されており、ジャンルやプレイスタイルに応じて使い分けることでより良いサウンドが作れます。「コーテッド、アンバサダー」がスタンダードとされています。
ドラムヘッドに関してはこちらの記事を参考にしてください。
ドラムヘッドの厚さと種類
「ドラムヘッド」を「シェル(のエッジ部分)」と密着させ、振動を伝える役割を持つのが「フープ(リム)」です。スネアドラムにおいては「リムショット」と呼ばれるフープを使用した奏法があるため、素材や製法に違いが見られます。金属製のフープには2種類の製法があり、それぞれに特徴がありますので、それらも把握しておくとサウンドメイキングに役立つでしょう。
「プレスフープ」は古くから取り入れられてきたフープであり、その名の通り金属をプレスし、薄く伸ばして成形されたフープです。厚さは1.6〜2.3mm程度で、「スチール」「ブラス」「アルミ」などの素材で作られており、金属ならではの倍音が豊富な明るいサウンドが特徴です。プレスフープは「フランジ(出っ張り、折り曲がった部分)」の作りが違う3種類が存在します。
「ダイキャスティング」という溶かした金属を型に入れる製法で作られているのが「ダイキャストフープ」です。「アルミ」「亜鉛」「ブロンズ」「チタン」などで作られており、厚さは2.5〜3mmと「プレスフープ」よりも厚いため、耐久性の向上だけでなく、アタック音が強くなります。どちらかといえばモダンな音楽に適しており、特に激しいジャンルなどではバンドサウンドに埋もれづらくなるため、おすすめです。
木製のフープを「ウッドフープ」と呼びます。素材は基本的に「メイプル」を使用しますが、金属に比べ耐久性が低いため、19プライなどの合板構造とウレタン塗装により硬度をあげ、耐久性を高めています。コストがかかる分、価格はやや高めですが、ウッドならではの温かみのあるサウンドはアンサンブルでも馴染みやすいと言えるでしょう。カナダのドラムメーカー「Dunnet」が開発した金属と木を組み合わせた「ハイブリッドフープ」というものもあります。
「スネアドラム」だけでなくほとんどのドラムで最もサウンドへの影響が大きいパーツが「シェル(胴)」であり、多種多様の木材や金属、またはその他の特殊な素材によって作られています。重要なポイントを項目別に解説します。
「スネアドラム」の一番大事な部分が「エッジ」です。シェルの振動をヘッドに伝える場所なので各メーカーによって角度が異なっています。角度が大きいとレスポンスは甘め、丸く柔らかいサウンドになり、角度が小さいとレスポンスが良く、シャープでタイトなサウンドになります。木胴スネアの場合、非常にデリケートな部分になりますので、エッジ部分を直接床などの固い場所に置いたりはせず、埃などがついている場合はしっかり拭き取っておきましょう。
ヘッドの張り替えの際にはエッジ部分を必ず!柔らかな布で拭きましょう!エッジに埃やスティックの削りカスが付いているままヘッドを張ってしまうと、最悪の場合エッジに傷がつきサウンドが変わってしまいます。エッジ部分をそのまま床や机など固い場所に置くのもNG!片側にフープをつけたたまま置くか、柔らかい布などを敷いて作業を行いしましょう。修理はほぼ不可能なのでメンテナンスの際は十分に注意してください。
シェルの厚みが薄くなるほどレスポンスが良くなりますが、サウンドはソフトになり、厚くなるほどレスポンスは甘くなりますが、キレのあるサウンドになります。エッジの角度やシェル構造との組み合わせによりスネアドラムのサウンドが決まります。
「シェル」に空いている空気穴を「エアホール(またはベントホール)」と呼びます。エアホールがあることにより音が詰まらず、響きます。メーカーやモデルによって穴の大きさや数は様々で、素材やサイズ、製造方法によってはエアホールが空いていないモデルも存在します。
「フープ」を固定し、「ドラムヘッド」を締めたり、緩めたりすることでチューニングを行うパーツが「テンションボルト」です。フープとの間にはワッシャーが挟まっており、金属製やフェルト製、ゴム製などの違いにより、サウンドへの影響や摩耗軽減やゆるみ防止の効果があります。メンテナンス時のグリスアップは忘れずにしておきましょう。テンションボルトの数によってサウンドキャラクターが変わります。
8本のテンションボルトで止められているものが「8テンション」と呼ばれます。テンションボルト毎の間隔が空いているため、シェルが鳴りやすく、響きやすい傾向にあります。
「10テンション」は、「8テンション」に比べ2本多いテンションボルトで止められているため、よりタイトで引き締まったサウンドになる傾向にあります。チューニングする際にも細かく調整することができます。
ヴィンテージや低価格帯モデルには「6テンション」や「12テンション」と言ったものも存在します。傾向としては上記の「8テンション」と「10テンション」の違いを参考にしてください。
「シェル」に付いており、「テンションボルト」を差し込むのが「ラグ」です。メーカーやモデルによって形状が異なり、サウンドへの影響も変わっていきます。いくつかの種類を紹介します。
「Ludwig」の「インペリアルラグ」などに代表されるのが「ブリッジラグ」です。多くのスネアドラムのラグに採用されており、ポピュラーなタイプです。ラグ全体がシェルと接しているため、サウンドに金属特有の倍音が混じりやすくなり、アタック音が強調されます。
浅胴シェルのスネアドラムやタム類などに採用されていることが多いのが「セパレートラグ」です。名前通りラグがトップ、ボトムに分かれており、接点を極力小さくし、シェルの響きを豊かにします。
「チューブラグ」は「Ludwig」のスネアドラムに搭載されていることで有名であり、形状は「ブリッジラグ」に似ていますが、音の性質は「セパレートラグ」に近く、シェル本来のナチュラルな響きを感じられる仕様となっています。「ステップラグ」もほぼ同じ仕様です。
「チューブラグ」1つでトップ、ボトムを支えているのが「シングルラグ」です。チューブラグよりも接点が小さいため、シェルの響きを損なわずに鳴らせます。「DW」が採用している「ラウンドラグ」などもやや接点は大きいですが、シングルラグに含まれます。
「Pearl」が開発した「フリーフローティング」は、フープ自体がラグになっている構造で、シェルに穴を開けていないため、最もシェル本来の響きを邪魔しないと言えるでしょう。
「スナッピー」のオン・オフ切り替えや張り具合の調整をする役割を持つのが「ストレイナー」です。貼り具合はノブを回すことで調整し、オン・オフの切り替えはレバーの上げ下げで切り替えます。各メーカー、モデル、年式により様々な形状があり、中にはマグネットで固定できるものや1つのスネアドラムに2つのストレイナーをつけたモデルも存在します。
「ストレイナー」の反対側から「スナッピー」を引っ張り合っているのが「バット(ストレイナーバット)」です。「スナッピーテープ」などを挟んで固定するだけのものもあれば、ノブで調整できるものもあります。
他のドラムと「スネアドラム」に明確なサウンドの違いをもたらしているのが、「スナッピー(響き線)」であり、これがなくてはスネアドラムとは言えません。金属製のワイヤーを複数本張ることで特有の「バズサウンド」を生み出し、ドラムヘッドを叩くアタック音やシェルが響く倍音、サスティーンと重なり、スネアサウンドとなります。20本がスタンダードで、本数が多いほどアタック音が強調され、少ないほどまろやかなサウンドとなります。
フープの外側まで金属プレートがはみ出しているものを「全面当たり」、プレートが内側に入っているものを「内面当たり」と言いますが、現在のスネアドラムはほとんどが「内面当たり」のため、そこまで気にする必要は無いでしょう。
「スナッピーテープ(ロープ)」は「スナッピー」を「ストレイナー」や「バット」に固定するのに必要なパーツです。プレートに挟み、ネジで締め込むことで固定します。「テープ」はプラスチックやナイロンを帯状にしたもので固定しやすく、耐久性もありますが、サウンドはややタイトになります。「ロープ」は紐のため、スナッピーが鳴りやすく、レスポンスが早いですが、長く使用していると切れてしまうことがあります。
シェルのボトム側に貼られたヘッドを「スネアサイド」と呼びます。バターヘッド用の「ディプロマット」よりも薄い専用のヘッドとなっており、「シェル」で増幅した振動を「スナッピー」に伝える大事な役割を持ちます。スネアサイドは薄いので張り過ぎると破れやすくなりますが、緩みがあるとスナッピーがしっかり鳴ってくれないため、ある程度のテンションをかけておく方が良いでしょう。
「スネアサイド」側の「フープ」は「スネアサイドフープ」と呼びます。違いは1つだけですが、スナッピーを通す穴が空いています。ドラマーは誰しもが通る道の1つですが、この位置を間違えてセットしてしまうとやり直しになりますので、覚えておいた方が良いポイントです。
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