世界トップクラスの電子楽器メーカーである「Roland」はドラム、特に電子ドラムを語る上では欠かせない存在です。プロが使用するイメージの強かった電子ドラムを一般的な楽器に落とし込んだ実績やトリガーやヘッドホンなどのアクセサリー類の開発など多岐に渡り活躍しています。この記事では「Roland」の歴史や愛用しているドラマー、過去から現在に至るまでの名機などを紹介、解説していきます。
ブランド及び会社名:Roland(ローランド株式会社)
1972年に大阪市で設立され、現在は静岡県浜松市に本社を構えている日本を代表する楽器メーカーの1つです。シンセサイザーや電子ピアノをはじめ、電子オルガン、電子ドラム、ミキサー、DJ機材、アンプ、スピーカーなど電子楽器全般を開発する総合電子楽器メーカーとして現在でも世界のトップ戦線を走っています。子会社はアメリカのトップアコースティックドラムメーカー「DW」、ヘッドホンメーカー「V-MODA」。
「梯 郁太郎(かけはし いくたろう)」氏は自ら電子楽器メーカーとして設立した「エース電子工業」を退社した後、1972年に「Roland」を設立、現在にも受け継がれているリズム・マシン「TR」シリーズを開発、発売します。翌年の1973年にはRoland初となるシンセサイザー「SH-1000」を発表し、エフェクター製造メーカー「メグ電子(後のBOSS)」を設立、NAMMショー、楽器フェアへの初出展、浜松に工場を建設など事業を大きく展開し、1978年にリズム・マシン「CR-68」「CR-78」を発売。
楽器開発と共に海外への事業展開も積極的に行っており、1976年〜2009年にかけてアメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコ、イギリス、ドイツ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、ハンガリー、フランス、イタリア、中国、オーストラリアに販売会社を設立しています。
1983年世界初となるMIDIシーケンサー「MSQ-700」やMIDIに対応したシンセサイザー「JX-3P」「JUPITER-6」を発売、1984年にはPCとMIDI機器を接続するインターフェイス「MPU-401」を発売し、今では電子楽器やDTM等において欠かせない存在である「MIDI」規格の誕生に大きく貢献しました。1985年にはメーカー初となる電子ドラム「α-DRUM」を発売しますが、プロが使用する楽器としての位置付けが強く、この時点では一般家庭等への電子ドラムの普及には繋がっていません。
1997年に発売されたV-Drums「TD-10K」は従来の概念を覆した世界初となるメッシュ・ヘッドを開発し、即時のサウンド・モデリングCOSMと合わせて静粛性の高いリアルな叩き心地を持つ電子ドラムとして大ヒット、一気に業界トップメーカーとして登り詰め、2007年に省スペースでスタイリッシュな「HD-1」、2016年に世界初となるハイブリッド・カホン「EC-10」、電子和太鼓「TAIKO-1」、アコースティックドラムのシェルを使用した「VAD706」など現在に至るまで多くの名機を開発し、最前線を走り続けています。
2022年にはアメリカのアコースティックドラムメーカー最大手である「DW」を買収し、2023年に革新的なハイブリッドドラム「DWe」を発売しています。
「Roland」を愛用するドラマーは非常に多く、自宅での練習用として使用しているケースも多くありますが、今回はV-Drumsアーティストの中から5名のドラマーをピックアップして紹介していきます。
「JUDY AND MARY」のドラマーとして活躍した後、スタジオ・ミュージシャンやドラム講師として活動している「五十嵐 公太」氏は長年に渡り「Roland」を愛用しているドラマーの1人です。V-Drums単体で使用することもありますが、アコースティックドラムと合わせて使用するハイブリッド・セッティングでの活用が多く見受けられます。
TD-20KS、TD-30KV、TD-50KV、OCTAPAD、SP-555など。
デヴィット・ボウイをはじめ数多くのミュージシャンやアーティストのサポートを行ってきたアメリカのジャズ・フュージョンドラマー「オマー・ハキム」氏はNAMMショーでのデモ演奏なども務めており、「TD-10」リリース時からV-Drumsを愛用しているドラマーの1人です。演奏面だけでなく、アイディアの録音やMIDIでの取り込みなどにおいても電子ドラムを活用しています。
TD-10、TD-30K-S、TD-50KV with KD-A22など
「SIAM SHADE」のドラマーとして活躍、その後ソロ活動を開始し、「T.M.Revolution」や「Gackt」のバックバンドへの参加やベーシストのIKUO氏と組んだバンド「BULL ZEICHEN 88」での活動、テレビ出演など多岐に渡り活躍しています。自宅での練習用やYoutubeの動画撮影用だけでなく、ライブではトリガーとモジュールをアコースティックセットに組み込んで活用しているようです。
TD-20KS、TD-30KV-S、TD-50KV-S、RT-10K、BT-1など
オーストラリア出身のセッションドラマー「トーマス・ラング」氏は「Mr.BIG」のギタリスト「ポール・ギルバート」氏など多くの著名ミュージシャンと共演しており、教則ビデオのリリースや自身のオンラインスクールの運営、マルチ・ドラマー・フェスティバルのホストを務めるなどマルチに活躍しています。V-Drumsだけでなく、サンプラーなどもセッティングに組み込んでいます。
SPD-30、SPD-SX、TD-30K-Sなど
国内のセッションドラマーの草分け的存在の1人である「山木 秀夫」氏も「Roland」を長く愛用し続けているドラマーの1人であり、アコースティックドラムセットのタムを全てパッドに変更したり、トリガーを組み込むなどハイブリッドドラムセットをいち早く現場に取り入れたドラマーの1人でもあります。
TD-30KV-S、BT-1、RT30HR、RT-30K、PD-128-BC、PD-108-BC、
Rolandの名機と呼ばれる機材は多くありますが、現在に至るまでにブラッシュアップされ進化を続けています。今回は現時点での定番製品ラインナップを紹介、解説していきます。
1997年に「TD-10K」が発売されてから世界中で電子ドラムのスタンダードとして定着したのが「V-Drums Kit」です。27年経った現在(※2024年現在)ではプロユースなフラッグシップモデルから10万以下で購入することのできるエントリーモデルまで様々なモデルをラインナップしています。
フラッグシップモデルである「TD716」は「DW」との連携によって生まれた最新のサンプリング音源やプラグインとの連携やUSBケーブルによって大容量のデータ通信を可能にし、アコースティック感のあるレスポンスやダイナミクスを実現したデジタル・パッド、従来モデルを踏襲した32トラックでのオーディオ録音やMIDI録音に対応したインターフェイス機能などが特徴であり、自宅での練習からライブ、レコーディングまでどのような環境にも適応する電子ドラムとなっています。
価格帯によって音源モジュールの内蔵音源や機能、パッドなどが異なっており、ユーザー自身が自分に適したモデルを選ぶ事ができるようになっていますが、ハイハットスタンドを使用するモデルがおすすめです。
「V-Drums Acoustic Design」は2020年に誕生したばかりですが、既にモデルチェンジを繰り返し、よりアコースティックドラムに近付いています。アコースティックドラムセットと電子ドラムやトリガーなどを組み合わせるハイブリッドセット化が進む中、打感やサウンドはもちろんですが、見た目にもこだわった作りが人気を得ています。
現時点でのフラッグシップモデルは「VAD716」となっており、最新の音源モジュール「V71」の搭載など上記した「TD716」とほぼ同じ仕様ですが、タム・パッドのセンサーなど異なる点がありますので、選ぶ際には注意が必要です。
1985年に「α-DRUM」と同時に発売された8打面のMIDIコントローラーパッド「PAD-8」は「OCTAPAD」と呼ばれ、その後進化を繰り返していきます。1988年にアップグレードされた「OCTAPADⅡ PAD-80」、1990年に内部電源を内蔵し、持ち運びが可能となった「SPD-8」が発売され、「SPD-11」「SPD-20」とモデルチェンジしていきます。
現在は「SPD-20 PRO」と「SPD-30 Version2」がラインナップされており、特徴である8打面は変わらず、LCDディスプレイによる視認性の向上や多くの音色とエフェクトを内蔵し、フットスイッチなどの外部機器と接続してミニドラムとしての活用やDAWでの活用など大きな進化と遂げています。
「OCTAPAD」からの派生によって2003年に誕生した「SPD-S」はCDと同じ44.1KHz(16bit)でサンプリングを可能にし、一躍サンプリングパッドの代名詞となりました。
2011年に「SPD-SX」、2022年に「SPD-SX PRO」が登場し、9つのパッドを搭載し、8つのトリガー入力、視認性の高いカラー・ディスプレイ、暗いステージでもパッドの位置が分かりやすいカスタマイズ可能なLED、マルチ・エフェクトなどを備えており、ドラマーだけでなく、DJやギタリストなど多くのミュージシャンやアーティストにとって必要不可欠なサンプリングパッドとなっています。
手で演奏できる電子パーカッションパッド「HandSonic」も「OCTAPAD」の派生として2000年に「HPD-15」として誕生しました。現在では「HPD-20」にモデルチェンジし、V-Drumsの技術を用いたSuperNATURALサウンド・エンジン搭載によってリアルなサウンドと豊かな表現力を兼ね備えています。850音色、3系統、25種類のマルチ・エフェクト、豊富な外部入出力、インターフェイス機能など1台あれば様々なパーカッションの代用が可能となる汎用性の高いパッドです。
世界初となる担ぎ桶スタイルの電子和太鼓「TAIKO-1」も日本が世界に誇る電子楽器メーカーならではの製品と言えるでしょう。1台で桶胴太鼓、長胴太鼓、締太鼓など複数の太鼓の音色を演奏する事ができ、V-Drumsの技術を活かした打点位置検出技術により幅広いダイナミクスなどの音色変化を実現しています。サイズや重量もこだわられており本物と同等の直径35cm、4.5Kgを採用しています。単三電池8本で約5時間駆動できるため、持ち運びにも最適です。
Media:Roland Official Website
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