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2022年3月に50歳という若さで亡くなってしまった「Foo Fighters(フー・ファイターズ)」を長年支えてきたドラマー「Taylor Hawkins(テイラー・ホーキンス)」。テイラー氏がドラマーを務めていなければ、Foo Fightersもここまで世界的モンスターバンドになることは無かったかもしれません。2005年に行われたイギリスのドラム雑誌「Rhythm」による読者投票でベストロックドラマー部門1位。この記事では多くのミュージシャンやファンを魅了してきたテイラー氏のワイルドかつエネルギッシュなプレイの秘密を探っていきます。
目次
生い立ち、下積み時代 所属バンドやキャリア プレイスタイル分析 使用機材 おすすめの音源
本名:Oliver Taylor Hawkins(オリバー・テイラー・ホーキンス)
1972年2月17日にアメリカのテキサス州フォートワースで誕生、1976年にカリフォルニア州ラグナビーチへ移住。(「当時太っていて何も上手くいかなかった」と後に語っている)テイラー氏は10歳の頃にドラムセットを買ってもらい、ドラムの才能が開花、高校のコンテストで優勝した後、地元のバンドで演奏するようになります。この頃は「Sylvia(シルヴィア)」というバンドで活動していました。
※「Sylvia」は現在「Anyone(エニワン)」というバンドに改名し、現在も活動中です。過去には「Korn(コーン)」の「デヴィッド・シルヴェリア」氏も在籍していたこともあります。
テイラー氏は「Foo Fighters」以前からドラマーとしてのキャリアをスタートしており、加入前から既にロックドラマーとしての風格を持っていました。惜しくも50歳という若さで亡くなってしまいましたが、多くのアーティストと共演したテイラー氏が関わったプロジェクトやバンドを振り返っていきます。
テイラー氏のプロドラマーとしてのキャリアは1994年にカナダのロックボーカリスト「サス・ジョーダン」のバックバンドでドラムを担当したところから始まります。レコーディングには参加していないため音源としては残っていませんが、ライブツアーで共演する中でジョーダン氏の持つロックスピリットによってテイラー氏のロックドラミングが確立されていきます。
1995年6月〜1997年3月まで3000万枚を超えるヒットアルバム「Jagged Little Pill」をリリースしたカナダのシンガーソングライター「アラニス・モリセット」のバックバンドでドラマーを務めていました。Jagged LittleツアーからCan’t Notツアーまで在籍し、「You Oughta Know」、「All I Really Want」、「You Learn」のMVや1997年にリリースされたライブDVD(VHS)「Jagged Little Pill, Live」でテイラー氏のドラミングを確認することができます。
1994年に「Foo Fighters」を自身のプロジェクトの1つとして立ち上げたデイヴ・グロールは1997年にリリースされた「The Colour and the Shape」のレコーディング中に当時ドラマーを務めていた「ウィリアム・ゴールドスミス」がバンドを離れた後、元々知人であったテイラー氏に後任のドラマーを紹介してもらえないか頼んだところテイラー氏自身が名乗りを上げ1997年3月18日に加入することが発表されました。
テイラー氏はドラマーとしてだけでなくボーカリストやソングライターとしても活躍し、初めてレコーディングに参加した3枚目のアルバム「There Is Nothing Left to Lose」以降、すべての曲において共同作曲者とクレジットされており、「Cold Day in the Sun」や「Sunday Rain」などでデイヴ氏とドラムとボーカルのパートチェンジを行うパフォーマンスも人気を博していました。テイラー氏が作曲やドラムをレコーディングした8枚のアルバムの内、7枚はプラチナアルバムとなっており、Foo Fightersになくてはならない存在だったことが分かります。
2000年に「Learn to Fly」のMVで初めてグラミー賞を受賞した後、「All My Life」、「The Pretender」、「White Limo」の最優秀ハードロックパフォーマンス賞をはじめ、現在までにグラミー賞を累計10回受賞、他にも様々な受賞経験を経て、2021年10月にはロックの殿堂入りを果たしています。
ワールドクラスの知名度と人気を得ていた最中、南米ツアー中の2022年3月25日にコロンビアのボゴダで胸の痛みを訴え、救急隊が到着するまでに意識不明となり亡くなりました。過去に使用していたドラッグによって心臓が常人の2倍にまで膨れ上がってしまっていたのが原因と言われています。2022年3月20日にアルゼンチンで行われたフェス「Lollapalooza(ロラパルーザ)」が最後のパフォーマンスとなりました。
2004年に自身のサイドプロジェクトとして「Taylor Hawkins and the Coattail Riders(テイラー・ホーキンス・アンド・ザ・コートテイル・ライダーズ)」を結成、テイラー氏はドラムボーカルを担当し、2006年〜2019年の間に3枚のアルバムをリリースしています。
2007年の地球温暖化防止活動の一環であるライブイベント「Live Earth」では「SOS Allstars」のリードドラマーとして「ロジャー・テイラー」「チャド・スミス」と共に参加しました。
2013年、Foo Fightersの休養中にロックカバーバンドである「Chevy Metal(シェヴィー・メタル)」を結成、ドラムボーカルを担当、ツアーも行っています。2014年に「The Birds of Satan(バーズ・オブ・サタン)」に名前を変えています。
2020年にはテイラー氏も大きな影響を受けたバンドの1つである「Jane’s Addiction」のギタリストである「デイヴ・ナヴァロ」とベーシストである「クリス・チェイニー」と共に「NHC(エヌ・エイチ・シー)」を結成し、このバンドでもドラムボーカルを担当。
他にも「Coheed and Cambria(コヒード・アンド・カンブリア)」、「エリック・エイブリー(Jane’s Addiction)」「Kerry Ellis(ケリー・エリス)」「Jackson United(ジャクソン・ユナイテッド)」「ブライアン・メイ(Queen)」「デニス・ウィルソン(Beach Boys)」「Slash(スラッシュ)」「Elton John(エルトン・ジョン)」など錚々たるアーティスト、ミュージシャン達と共演しています。
テイラー氏のドラミングを一言で表すならばタイトルにある通り「ワイルド&エネルギッシュ」という言葉が非常に似合います。1打1打に魂を込めて叩いている姿はまさにロックドラミングの象徴であり、現代を代表するロックドラマーの1人と言えるでしょう。特にスネアドラムのバックビートは強烈で、バンドサウンドのドライブ感を増しグルーヴを生み出しています。
アラニス・モリセットの楽曲はミドルからスローテンポが多いため、Foo Fighters期とは違うテイラー氏の側面が見られます。ロックフィールを残しつつ、16ビートを基調としたファンキーでタイトなドラミング、そして後半になるにつれて裏からダブルで入れるバスドラムなど特徴的なフレーズを聞くことができます。テイラー氏はサブスネアもよく使用していますが、この頃から使用しています。映像からはテイラー氏のドラミングがバンドの重要な役割を担っていることが伺えます。
2017年のライブ映像。Foo Fighters屈指の名曲である「My Hero」は元々デイヴ氏がドラムを重ね録りして作られていますが、1台のドラムセットで再現しています。バスドラムの連打はデイヴ氏にも通ずる部分がありますが、タイトでありながらドライブしていくグルーヴは彼ならでは。曲後半のライブアレンジでは3連フレーズなども絡め、テクニカルな一面も垣間見れますが、曲中では比較的シンプルなフレーズで進んでいくボーカルを邪魔しないドラミングも特徴の1つです。激しいプレイをしていてもボーカルが歌いやすい、歌心のあるドラミングはテイラー氏自身が作曲やボーカルを行うこともあることから身についているものなのでしょう。
こちらは2006年に行われたFoo Fightersの伝説的なライブの1つ「Hyde Park」でのドラムソロです。ソロの入りはグルーヴィなジャングルビート風の連打で入り、ボンゾ氏やデイヴ氏を連想させる手足のコンビネーションによる3連、6連フレーズやクロス・スティッキングが見られます。ドラムソロにおいてスネアドラムのスナッピーをオフにしてトライバルなビートを組み込むのを多用しており、様々なライブで確認することができます。
「All My Life」 もFoo Fightersを語る上で外せない曲の1つです。休符を多用しているドラムアレンジにテイラー氏のタイトかつドライブ感のあるグルーヴがピッタリハマっており、メリハリの効いた演奏になっています。スティックを振りかぶり、脚全体でバスドラムを踏む、身体全体でドラムを叩く姿勢はテイラー氏の特徴の1つですが、特にAll My Lifeのようなロックナンバーでは顕著に見ることができます。
テイラー氏は時期によってドラムセットやセッティング内容が大きく変わりますが、身体とドラムセットやシンバルをかなり近い位置にセットしていることが大きな特徴です。セッティングはサス・ジョーダン期はワンタム、ツーフロアでクラッシュシンバルを高くセットし、エフェクトシンバルやサブスネアも使用。アラニス・モリセット期は更にシンバルやタムを増やし多点キットになっています。Foo Fighters期ではシンプルなセッティングの時からティンパニなどを使用することなどもあり、演奏する楽曲やセットリストなどにより柔軟にセッティングを変化させています。ここでは主にFoo Fighters期に使用していた機材を紹介します。
タムタム | 6″ × 5″ 8″ × 6″ 13″ × 9″ |
フロアタム | 16″ × 16″ 18″ × 16″ |
バスドラム | 24″ × 18″ |
テイラー氏がメインで使用していたのはGretschでしたが、他にも「Ludwig / Silver Kit」や「OCDP」のドラムセットを使用していました。
テイラー氏は様々なスネアドラムを使用していましたが、最も多く使用されていたのはこの3台、特にベルブラスシェルのスネアドラムを多く使用していたように見えます。バンドサウンドの中でも埋もれないスネアサウンドは全て6.5インチの深胴タイプのシェルからと聞けば納得です。サブスネアとしても使用していたようです。
ハイハット | New Beat HiHat 15″ |
クラッシュ | A Custom 19″ K Custom Hybrid 19″ A Custom 20″ A Zildjian Medium Thin 20″ |
クラッシュライド | K Zildjian 21″ |
ライド | A Custom 22″ |
エフェクト | A Custom EFX20″ |
シンバルはキャリアスタート時から一貫してZildjianで統一。ロック色の強いA Customシリーズを好んで使用している傾向にあります。
DW-5000を使用していた時期もありますが、基本的にはDW-9000を使用。
ハイハットスタンド | DW / DW-9500D |
シンバルスタンド | DW / DW-9700XL Gibraltar / 6710 Gibraltar / 9709-BT |
スネアスタンド | Gibraltar / 9706 |
DWとGibraltarの頑丈でハードなプレイにも対応できるハードウェアを好んでいました。
ロートタム | Remo / Rototom 14″ |
カウベル | LP / LP009-N |
ウッドブロック | LP / LP1207 |
ロートタムはフロアタム側にセットすることが多く、カウベルとウッドブロックはハイハット側にセットしていたようです。
ドラムヘッドはRemoで統一していましたが、ドラムセットや演奏する楽曲によって使い分けていました。
テイラー氏のシグネイチャードラムスティックはロングサイズの5Bタイプで、パワフルなサウンドメイクを可能にしています。
Zildjian / Taylor Hawkins Signatureを…
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セカンドまでのグランジ色やサードのポップさを脱ぎ捨てアメリカンハードロックという言葉が似合う1枚。このアルバムが完成するまでにバンドはレコーディングが上手くいかないことから解散寸前まで追い込まれましたが、無事に完成し大ヒットを記録。バンドの足元を固め、盤石の体制を築くこととなります。ストレートなロックナンバーが多いこのアルバムは1曲目の「All My Life」からエンジン全開のテイラー氏のドラミングを聞くことができ、続く「Low」「Have It All」「Times Like These」とハード、ヘヴィさを感じながらどこか爽やかさを感じるのはテイラー氏の疾走感溢れるドラミングによる部分が大きいでしょう。全体を通してキャッチーさは健在のため、聴いたことのない方でも聴きやすいアルバムです。
Foo Fighters / One by Oneを…
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1枚目がロック、2枚目がアコースティックとテーマが分かれたFoo Fighters初となる2枚組のアルバム。テイラー氏が参加したアルバムの中では最大のヒットを記録しました。「In Your Honor」のフロアタム、スネアドラムを軸にした独特なフレーズから「No Way Back」のアップテンポでドライブ感溢れる流れは最初からボルテージをマックスにしてくれます。名曲の1つと言われている「Best of You」や6/8拍子を基調とした「The Deepest Blues Are Black」など、どこか哀愁を漂わせる名曲が続きます。ライブでも定番となっているテイラー氏がボーカルにパートチェンジする「Cold Day In The Sun」は2枚目のディスクに収録されています。
Foo Fighters / In Your Honorを…
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Foo Fightersにとっては3枚目のアルバムですが、テイラー氏が加入後初めて参加した作品です。1曲目の「Stacked Actors」を聴くとファースト、セカンドに続くグランジ色が強いアルバムかと思いますが、名曲の1つである「Learn to Fly」でガラッとイメージが変わり、「Generator」「Aurora」「Next Year」「Headwires」など後半に行くにつれポップネスを感じることができます。Foo Fightersの中でもトップクラスにキャッチーでポップなため、初めて聴くアルバムとしてはおすすめです。テイラー氏のボーカルを邪魔しない歌心のあるドラミングを聴くならこのアルバムがベストでしょう。
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Wikipedia:Taylor Hawkins、Foo Fighters、Alanis Morissette、Sass Jordan
Media:The Washington Post、Far Out Magazine、Equipboard、Gretsch Official Site
書籍:The Storyteller: Tales of Life and Music(Dave Grohl)
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