《最強の助っ人セッションドラマー》Josh Freese(ジョシュ・フリース)[記事公開日]2023年6月14日
[最終更新日]2024年3月30日

2023年5月に「Foo Fighters」への加入が発表された「ジョシュ・フリース」氏は「Guns N’ Roses」や「The Offspring」など数多くのバンドやアーティスト達をサポートしてきたキャリアを持つ人気ドラマーです。この記事ではフリース氏の辿った軌跡やプレイスタイル、使用機材などを分析し、解説していきます。

目次

生い立ち、下積み時代 所属バンドやキャリア プレイスタイル分析 使用機材 おすすめの音源

ジョシュ・フリースの生い立ちと下積み時代

本名:Joshua Ryan Freese(ジョシュア・ライアン・フリース)
1972年12月25日にアメリカフロリダ州オーランドにて誕生、父親はチューバ・ソリストの「スタン・フリース」、弟はマルチ・ミュージシャンの「ジェイソン・フリース」。
フリース氏は8歳でドラムを叩き始め、父であるスタン氏がディズニーワールドとディズニーランドのバンドディレクターを務めていたこともあり、12歳の時に少年達で構成された「Polo」というバンドのドラマーとして、キャリアをスタートさせます。


※「Jr. Starsearch」というオーディションTV番組で演奏し、チャンピオンとなった「Polo」。この時のドラマーは「ジミー・キーガン(Spock’s Beard)」。

16歳で高校を退学、「フランク・ザッパ」の息子である「ドゥイージル・ザッパ」氏と共に活動し、その後は 「the Vandals」とレコード制作やツアーに回ることとなります。

逸話、エピソード

  • 弟のジェイソン氏はサックスやピアノ、キーボードをはじめ多くの楽器を演奏することができ、「Green Day」をはじめ、「the Goo Goo Dolls」や「Lenny Kravitz」等のビッグアーティスト達と共演を重ね、現在も活躍しています。
  • 「Polo」のドラマーだった「ジミー・キーガン」氏はフリース氏のために、ドラマーの座を譲ったと言われています。
  • 音楽一家としてTV番組等での露出も増えたことから電子ドラムメーカー「Simmons」とエンドース契約を結び、TVCMにも出演しています。
  • 「困った時のジョシュ」と呼ばれるほど、ピンチヒッタードラマーとして声がかかる腕前と人望の持ち主であり、ドラマー以外の楽器プレイヤーからも人気の高いドラマーです。
  • 「Guns N’ Roses」に加入し、「Chinese Democracy」のために30曲ほどを録り終えていましたが、2年契約だったためアルバム完成前に脱退、後任の「ブライアン・マンティア」によって全て再録音されています。
  • 「Devo」が1980年にリリースしたアルバム「Freedom of Choice」のおかげでドラムを覚えることができたと本人が語っています。
  • フリース氏が「the Vandals」で活動できない期間は「ブルックス・ワッカーマン(Avenged Sevenfold)」や「バイロン・マクマキン(Pennywise)」等のドラマー達がサポートを行っています。
  • 「The Offspring」のセッションドラマーを初めて務めた2003年以降、度々アルバムに参加しています。
  • 「Lostprophets」のセッションドラマーは当初「トラヴィス・バーカー」が務める予定でしたが、プロデューサーの「ボブ・ロック」の指名によりフリース氏が選ばれました。
  • 1998年にリリースされたソロアルバム「Destroy Earth Ason As Possible」は「Princess」名義となっています。

ジョシュ・フリースが所属したバンドを紹介

フリース氏が所属、サポートしてきたバンドは数知れず、全てを紹介しきることは難しいですが、年表と共に見ていきましょう。

1989年〜2000年


※「the Vandals」ではパワフルなプレイでパンクロックサウンドを支えています。

  • 1989年:カリフォルニアのパンクロックバンド「the Vandals」に加入。(現在も活動中)
  • 1992年:セッションドラマーとして本格的に活動を開始。ファンクメタルバンドの「Infectious Grooves」、ハードコアバンドの「Suicidal Tendencies」のアルバムに参加。
  • 1994年〜1995年:韓国のグループ「Seo Taiji and Boys」のアルバムに参加。
  • 1996年:ニューウェーブバンド「Devo」に加入。(現在も活動中)
  • 1997年:ハードロックバンド「Guns N’ Roses」に2年契約で加入。
  • 1998年:ラップロックバンド「311」のツアーサポートを行う。
  • 1999年:「マイク・ネス」と彼のバンドであるパンクロックバンド「Social Distortion」のアルバムに参加。

2000年〜2010年


※「A Perfect Circle」への加入によりテクニカルでヘヴィなプレイも目立つようになります。

  • 2000年:ギタリストの「ビリー・ハワーデル」とボーカリストの「メイナード・ジェイムズ・キーナン(Tool)」と共にロックバンド「A Perfect Circle」を立ち上げる。
  • 2002年:ポップパンクバンド「Good Charlotte」のアルバムに参加。
  • 2003年:ロックバンドの「Evanescence」、「Acroma」、ニューメタルバンド「Static-X」、ポップパンクバンド「The Offspring」、「ブライアン・ウェルチ(Korn)」、オルタナティブロックバンド「Ween」のアルバムに参加。「ビリー・ハワーデル(A Perfect Circle)」のソロプロジェクト「Ashes Divide」に参加。
  • 2005年:「スティング(The Police)」のツアードラマーとして帯同し、ライブサポートやレコーディングにも参加。ロックバンド「Lostprophets」、「The Replacements」のアルバムに参加。
  • 2006年:ハードロックバンド「Daughtry」のアルバムに参加。
  • 〜2008年:2005年から始まった「Nine Inch Nails」のツアードラマーとして帯同。アルバム制作にも参加し、2008年までサポートを行う。この間に「ウェス・ボーランド(Limp Bizkit)」が立ち上げた「Black Light Burns」や「アーロン・ノース(Nine Inch Nails)」のバンド「Jubilee」、「Hollywood Undead」のアルバムにも参加。
  • 〜2009年:家族や恋人との時間を増やすために休養期間に入る。
  • 2009年〜:パワーポップバンド「Weezer」のツアードラマーを務める傍、「マイケル・ブーブレ」、「吉井和哉」、「浜崎あゆみ」等様々なアーティストのアルバムに参加。

2010年〜2023年


※「Foo Fighters」への加入が発表され、エネルギッシュなドラミングはテイラーを彷彿とさせます。

  • 2011年:レゲエロックバンド「Sublime with Rome」への加入やポップパンクバンド「Paramore」のツアーサポートを行う。
  • 2013年:「The Replacements」の復帰に伴い、2015年までライブサポートを行う。
  • 2014年:「ブルース・スプリングスティーン」のアルバムに参加。
  • 2021年:「The Offspring」のツアードラマーとして帯同。
  • 2022年:エレクトロポップグループ「100 gecs」のライブへ参加。「テイラー・ホーキンス(Foo Fighters)」追悼コンサートにおいて「Foo Fighters」と共演。
  • 2023年:「Foo Fighters」の正式メンバーとして加入。

他にも「Queens of the Stone Age」、「Dwarves」、「Goon Moon」等とのレコーディングやツアー、ライブサポート、自身のソロアルバム制作など幅広く活動を行っています。

ジョシュ・フリースのプレイスタイル分析

数多くのバンドをサポートし、大ヒットを生み出した経験も少なくないフリース氏。パワフルで速いパンクスタイルのドラミングがベースとなっていますが、様々なジャンルに対応できるアプローチやグルーヴを持っているフリース氏のプレイスタイルを動画とともに分析、解説していきます。


※「The Offspring」でのオーソドックスなパンクドラミング。

「The Vandals」の頃から速いテンポの8ビートやダブルタイム8ビート等のシンプルなドラムパターンにロールを多用したフィルインなどがフリース氏の得意とするドラムパターンです。ただ闇雲に速いだけではなく、しっかり楽曲を盛り上げるリズムとグルーヴを生み出せているのは、決して他の楽器の邪魔をしない耳の良さと適応力の高さと言えるでしょう。


※フリース氏のキャリアの中でも高い評価を得ているのが「Nine Inch Nails」でのドラミングです。

シンプルなフレーズを用いるのはベースとなっていますが、変拍子などのテクニカルなプレイにも対応することができ、ダイナミクスのコントロールやヘヴィなグルーヴ、高速ツーバス連打などオールラウンドに活躍できる理由は一目瞭然です。フリース氏はアメリカン〜フレンチグリップで、人差し指を伸ばし気味にしているのが見受けられ、かなり軽く握っているのが分かります。また、速いフレーズなどは手首をやや回転させることで対応しています。


※「Sting」のライブ映像。「スチュワート・コープランド(The Police)」とはまた一味違うドラミング。

フリース氏の楽曲を活かすドラミングは、ロックの中でも特に歌モノ系と相性が良く、大ヒットに繋がっています。ライブももちろん魅力に溢れていますが、フリース氏の持ち味はスタジオでの楽曲制作やセッション、レコーディング時に発揮するドラムパターン、フィルメイクにあると言えます。

ジョシュ・フリースが使用した機材

フリース氏はドラムスローンをやや高めにセットしていますが、全体的にスタンダードなセッティングで、無理ない体勢で全ての楽器を演奏できる位置に配置しています。様々なアーティストをサポートしているため、使用している楽器はかなりの数になると思われますが、公開されている情報を元に紹介していきます。

ドラムセット

キャリアにおいて様々なドラムセットやを使用していますが、DWのドラムセットがメインです。セッティングはジャンルによって変更し、シンプルな場合もあれば、多点キットにしている場合もあります。

DW / Collector’s Series Maple Drums

タムタム 10″ × 8″
12″ × 9″
14″ × 11″
フロアタム 16″ × 14″
18″ × 16″
バスドラム 24″ × 18″
カラー Black Lacquer
Black Hardware

スネアドラム

14″ × 6″ Vintage Bronze Brass Snare Drum

※DWのベルブロンズスネアという説が有力です。

14″ × 5.5″ Super Solid Snare Drum

シンバル

Paiste

シンバルは「Paiste」を愛用しており、2003年からエンドース契約を結んでいます。サポートするバンドやアーティストによって使用するシンバルは異なりますが、主に使用しているシンバルは以下になります。

ハイハット 15″ 2002 Sound Edge Hi-Hat
14″ Signature Dark Energy Hats
Mark I
クラッシュ
シンバル
19″ 2002 Crash
20″ 2002 Crash
17″ Signature Dark Energy Crash
Mark I
18″ Signature Dark Energy Crash
Mark I
19″ Signature Full Crash
ライド
シンバル
22″ Signature Dark Energy Ride
Mark II
22″ Signature Power Ride
21″ Masters Medium Ride
スプラッシュ
シンバル
10″ Signature Splash
12″ Signature Splash
エフェクト
シンバル
20″ PST X Swiss Medium Crash

キックペダル

DW / 9002 ツインペダル

ペダルはスピーディーかつ操作性の良い「DW9002」を使用しています。ツアーサポートなどの際には耐久性や扱いやすさも重要になります。

ハードウェア

ハードウェア類は全て「DW / 9000」シリーズで統一されています。

ハイハットスタンド 9500
シンバルスタンド 9700
スネアスタンド 9300
タムスタンド 9934
ドラムスローン 9100

トリガー

Alesis / 8″ DM Pad Single-Zone Pad

サポートするバンドによっては、ドラムセットにトリガーやパッドなど電子楽器をと入れることもあります。

ドラムヘッド

Remo

ドラムヘッドは「Remo」を使用しており、オーソドックスなタイプのドラムヘッドを選ぶ傾向にあります。

  • アンバサダークリア
  • アンバサダーヘイジースネアサイド
  • CSコーテッドブラックドット
  • エンペラーヴィンテージクリア
  • Powerstroke P3 クリア
  • Powerstroke P3 エボニー

ドラムスティック

  • Vater / Josh Freese’s H-220

ドラムスティックは自身のシグネイチャーモデルを使用しています。オーバルチップを採用した40.6cm × 14.7mmの5Bサイズでテーパーが短く、パワーヒッターにおすすめです。

ジョシュ・フリースのドラミングが収録されたおすすめ音源

フリース氏のドラミングを聴くことができるおすすめのCDを紹介します。

The Vandals / Fear of a Punk Planet

80年代後半から90年代にかけて、カリフォルニアパンクシーンは「Fat Wreck Chords」や「Epitaph Records」所属の人気バンドが人気を博していましたが、そんな中90年代を代表するアルバムとして誕生したのが、「The Vandals / Fear of a Punk Planet」です。フリース氏は1989年にThe Vandals加入して以来、現在までオリジナルメンバーとして在籍しており、爽快なパンクロックドラミングによって、バンドの人気を支えています。現在のオールラウンドプレイヤーとしてのドラミングも魅力的ですが、是非フリース氏のドラミングの原点とも言えるパンクアルバムを聴いてみてください。


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Nine Inch Nails / The Slip

2020年にロックの殿堂入りを果たした現代のモンスターロックバンドの1つ「Nine Inch Nails(以下NINと呼称。)」がリリースした7枚目のアルバム「The Slip」はフリース氏がレコーディングを行っています。テクノなどのエレクトロミュージックの要素を取り入れていますが、フリース氏は過去に電子ドラムメーカーである「Simmons」と契約していたこともあり、NINとの相性は非常によく、それらと融合したフリース氏のドラミングは一聴の価値ありです。曲の中には電子ドラムのようなサウンドでレコーディングされたものもあり、全曲通して聴き応えのあるアルバムとなっています。


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Evanescence / Fallen

「Evanescence / Fallen」は2003年にリリースされたデビューアルバムであり、世界で約1,700万枚販売された大ヒットアルバムです。アルバムを通し、ミドルからスローテンポでヘヴィなサウンドとグルーヴが特徴ですが、フリース氏は見事に歌、楽曲を生かし、叩きこなしています。”速いテンポの曲に慣れていると、遅いテンポの楽曲に手こずる、慣れるまでに時間がかかる”とはよく聞く話ですが、そのテンポでもすぐに対応できるのはフリース氏の懐の深さを感じます。過去に行ったサポート経験が生かされているのではないでしょうか。


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