日本国内で最も有名なメロコア、パンクバンドの1つである「Hi-STANDARD(ハイスタンダード、略称ハイスタ)」のドラマーとして活躍し、解散後も様々なアーティストのサポートを数多くこなしていた最中、惜しくも2023年2月14日に51歳という若さでこの世を去ってしまった日本国内屈指のメロコア、パンク界のドラムヒーロー「恒岡 章(つねおか あきら)」氏。この記事では恒岡氏のバンド遍歴やプレイスタイル、使用していた機材などを分析、紹介していきます。
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生い立ち、下積み時代 所属バンドやキャリア プレイスタイル分析 使用機材 おすすめの音源
本名:恒岡 章(つねおか あきら)
愛称:ツネ
1971年6月1日に東京都板橋区で誕生、実家がスナックを経営していた影響もあり、小学生の頃からカラオケなどから音楽に興味を持ち、「長渕 剛」に憧れて中学に入学した後にギターを始めますが、中学3年生時にドラムに転向します。それ以来、ドラマーとして活動しており、高校生になってからも「Chu-毒」というバンドで1〜2年活動しています。
「Hi-STANDARD」以外のバンドや様々なアーティストのサポートドラマーとして活動していた恒岡氏のキャリアを追っていきます。
1991年にボーカルの松本敦彦、ベースの難波章浩、ギターの横山健、ドラマーの恒岡章の4人で結成しますが、1992年にデモテープを製作した後、松本は脱退し「SLIME FISHER(スライム・フィッシャー)」に加入。3ピースバンドになりますが精力的にライブを続け、海外のパンクバンド「ALL(オール)」や「L7(エルセブン)」などのオープニングアクトを務めるなど頭角を表していきます。
1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし、「NOFX(ノーーエフエックス)」「LAGWAGON(ラグワゴン)」「STRUNG OUT(ストラング・アウト)」など「FAT WRECK CHORDS(ファット・レコーズ)」所属バンドの来日ツアーをサポート。これがきっかけとなりアメリカでレコーディングを行なった1995年にリリースされた1stフルアルバム「GROWING UP」は70万枚を超えるセールスを記録し、一躍国内のインディーズバンドのトップを走り続けることとなります。3ピースという音数が少ない編成ながらもここまで人気が出たのには恒岡氏のドラミングによってバンドサウンドが軽くならなかったことが影響しています。
その後も「Green Day(グリーン・デイ)」や「Rancid(ランシド)」「The Offspring(オフスプリング)」など海外で凄まじい人気を誇るモンスターバンド等と共演し、アメリカ、カナダツアーを敢行、2ndフルアルバムもアメリカでレコーディングを行い、1997年にリリースされた「ANGRY FIST」はオリコン初登場4位を記録しています。
結成してから現在に至るまでインディーズでの活動を継続して行なっており、バンド自ら主催した「AIR JAM」も1997年に初開催され、15,000人を集客し、現在では伝説のフェスとして有名です。1998年にはアメリカのパンクライブツアーとして有名な「WARPED TOUR」に参加し、同年開催の「AIR JAM」では30,000人の集客を記録。
1999年にリリースされた3rdフルアルバム「MAKING THE ROAD」はオリコン初登場3位、ミリオンヒットを記録し、2000年にはシングル「LOVE IS A BATTLEFIELD」をリリース、3回目となる「AIR JAM」を開催しますが、人気絶頂の中、突然の活動休止を発表します。
10年以上の活動停止期間を経て、2011年にバンドメンバー全員のTwitterで活動再開を示唆、4回目となる「AIR JAM」の開催と同時に活動を再開します。その後もライブやツアー、シングル、アルバムのリリースを行なっており、バンドの人気も再度高まる最中、非常に残念ながら恒岡氏は2023年2月14日に51歳という若さで亡くなりました。バンドは継続すると発表されています。
「松田岳二」によるソロプロジェクトである「CUBISMO GRAFICO」が2003年からバンド形態で活動を行うようになったため、「CUBISMO GRAFICO FIVE(キュビズモ・グラフィコ・ファイブ)」と呼ばれています。恒岡氏はバンド形態になってからはオリジナルメンバーとしてドラマーを務めており、ジャズやファンク、レゲエなどハイスタよりも幅広いジャンルのドラミングを披露していました。2003年に発表された3rdアルバム「CINQ」から「CUBISMO GRAFICO FIVE」名義となっており、恒岡氏が参加したアルバムは7枚リリースされています。
恒岡氏は「村上正人(ASSFORT/HELLBENT)」「HIKO(GAUZE)」とのドラムトリオ「恒正彦」や「村田シゲ(□□□※読み方:クチロロ)」とのインストゥルメンタルユニット「summertime(サマータイム)」などのプロジェクトにも参加しており、過去ライブやレコーディングでサポートしてきたアーティストは「LOW IQ & THE BEAT BREAKER(ロー・アイキュー・アンド・ザ・ビート・ブレイカー)」「磯部正文BAND」「崎山蒼志」「あいみょん」「のん」「山本彩」「竹原ピストル」「関取花」「竹内アンナ」「ポルノグラフィティ」「上白石萌音」「木村カエラ」「スネオヘアー」「いきものがかり」「ばってん少女隊」「黒木渚」「Splatoon」「Curly Giraffe」と錚々たる顔ぶれです。
CMソングのレコーディングにも携わっており、SOYJOY 「誘惑に負けろ」篇、MINTIA「僕とミンィアと」「私とミンティアと」「マネすんなよ」篇、ランドリン(Laundrin)「柔軟剤・ファブリックミスト」篇、Coca-Cola「Heritage」篇でも恒岡氏のドラミングを聴くことができます。
恒岡氏は「Hi-STANDARD」で活動していたイメージが強いですが、恒岡氏は「Hi-STANDARD」のドラマーだったため、パンクのイメージが強いですが、非常にグルーヴを感じさせるドラミングが特色であり、ファンクなどの黒人音楽に強い影響を受けているのを多くの曲の中で感じ取ることができます。少年時代に聞いていたフォークソングも楽曲に対するドラムアレンジのルーツとなっており、速いスピードで展開する中でも歌心のあるドラミングが魅力です。どのようなバンドやジャンルでもフレキシブルに対応できるプレイスタイルの秘密に迫ります。
恒岡氏の代表的なドラムパターンといえばダブルタイム8ビートですが、ハードコア特有の「D-Beat」のような休符を効かせたフレーズが持ち味です。スラッシュメタルなどでよく演奏されるダブルアクションを用いたフレーズも演奏することがありますが、全てシングルペダルで演奏しているのも特徴の1つです。速いテンポでもハイハットをしっかり刻んでおり、全身のフィジカルの高さが伺えます。フィルインも特徴的でただシングルストロークで連打するだけでなく、アクセントや3連符や6連符ををうまく使用したり、タムをメロディックに回していくフレーズは曲を邪魔せず、盛り上げる役目を担っています。
サビで叩いているいわゆるタテノリのリズムパターンも恒岡氏の代名詞的なリズムパターンの1つであり、モータウンで良く演奏されるドラムパターンのアレンジです。曲にノリの良さとキャッチーさを与えるドラムアレンジは恒岡氏ならでは。現在ハイスタに影響を受けたバンドは数多くいますが、どのバンドのドラマーも上記のダブルタイム8ビートやモータウンパターンは必ずと言って良い程採用しており、影響力が高いことが分かります。
https://www.youtube.com/watch?v=S7HGRh0L0-4
日本のガールズロックバンド「チャットモンチー」のサポートドラマーとしても活躍し、ハイスタ時代よりもポップでキャッチーな曲に合わせた歌うドラミングを披露しています。疾走感溢れるドラミングとミドル、スローテンポになった際のギャップは曲にスリリングさとダイナミクスを与え、ライブ感の強いグルーヴを感じさせます。
Hi-STANDARD時代には国内のドラムメーカー「Negi Drums」(バーチもしくはビーチ)を使用していたことで有名ですが、近年は「DW」のドラムセットを使用していました。ドラムスローンは重心が取りやすいようにやや低めになっており、速いフレーズに対応できるようにドラムセットやシンバルも身体から近い位置にセッティングしています。ハイスタ時代にはチャイナシンバルを高くセッティングしていたのが特徴的でした。
タムタム | VLTシェル 12″ × 9″ 13″ × 9″ |
フロアタム | Xシェル 14″ × 12″ 16″ × 14″ 18″ × 16″ |
バスドラム | VLX+シェル 22″ × 16″ |
タムタム | 12″ × 8″ 13″ × 9″ |
フロアタム | 14″ × 14″ 16″ × 16″ 18″ × 16″ |
バスドラム | 22″ × 14″ or 24″ × 14″ |
この他に「Ludwig / Vistalite」なども使用しています。
スネアドラムも過去には「Negi Drums」(バーチもしくはビーチ)を使用していましたが、近年はDWやLudwigのヴィンテージをメインで使用していました。
シンバルはPaiste2002シリーズを長年愛用しています。
ハイハット | Heavy 14″ |
クラッシュ | 16″ 18″ |
ライド | Power Bell Ride 20″ |
チャイナ | Novo China 20″ |
恒岡氏の速いフットワークを支える重要なキックペダルはベルトタイプで軽いアクションが特徴の「FP-710」と耐久性や安定性の高い「DW5000」を使用しています。
※現在は復刻モデルとして「FP-720」が販売されています。
ハードウェアはDWで統一されており、シンバルスタンドやスネアスタンドにはフラットベースタイプを使用、ドラムスローンはDWの中でも低くセッティングできるLOWタイプを使用しています。
ハイハットスタンド | DW-9500TB |
シンバルスタンド | DW9700 DW-6700 DW-6710 |
スネアスタンド | DW-6300 |
ドラムスローン | DW5101 |
型名は不明ですが、LPのタンバリンやボンゴを使用していたこともあります。
ハイスタ時代にはチップレスのロックノッカーを愛用していました。スティックコントロールが難しいドラムスティックのため、恒岡氏の巧さが分かります。
最近では自身のシグネイチャーモデルである「S-140AT」を使用していました。
Hi-StandardのCDには国内版と輸入版の2種類があり、収録曲が若干異なりますので、気になる方は集めてみることをおすすめします。
「ANGRY FIST」は最もメロコアらしさが感じられるアルバムとなっており、ハードコアっぽさを感じる「START TODAY」から始まり、疾走感抜群の「ENDLESS TRIP」「MY HEART FEELS SO FREE」「CLOSE TO ME」「SHY BOY」などの王道メロコアサウンドや「STOP THE TIME」「SUN SHINE BABY」「GOTTA PULL MYSELF TOGETHER」「THE SOUND OF SECRET MINDS」などのキャッチーな曲とのバランスも良く、バリエーションに富んだ恒岡氏のドラミングを聴くことができます。爽やかな曲が好きな方はこのアルバムから聴くのがおすすめです。
Hi-STANDARD / ANGRY FISTを…
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1stフルアルバム「GROWING UP」のバンドサウンドはパンク色が濃く感じられますが、メロディはキャッチーに仕上がっています。恒岡氏のドラミングもイントロのフィルインが印象的な「LONLEY」や「SUMMER OF LOVE」「GROOVY CREW」などメロコアの枠に捉われない自由な発想で作られたパターンを聴くことができます。「CALIFORNIA DREAMIN’」「I’M WALKIN’」「IN THE BRIGHTLY MOONLIGHT」などの速いテンポや複雑なリズムパターンを持っている曲も面白くアルバム通して飽きない構成となっています。オリジナリティ溢れるリズムパターンや構成が好きな方におすすめな1枚です。
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ハイスタ最大のヒットを記録したのがこの「MAKING THE ROAD」です。1曲目「TURNING BACK」からの流れは非常に秀逸でそれだけでアルバムに引き込まれてしまいます。特に2曲目「STANDING STILL」のイントロのドラムフレーズは曲を繋ぐ最適なフィルインと言えます。「JUST ROCK」や「NO HEROES」「MAKING THE ROAD BLUES」などのハードな曲からキャッチーかつポップな「DEAR MY FRIEND」「GLORY」「PLEASE PLEASE PLEASE」「MOSH UNDER THE RAINBOW」、王道な「STAY GOLD」「NOTHING」「STARRY NIGHT」など過去のアルバムよりもジャンルの幅広さと楽曲の懐の深さを感じられます。誰にでもおすすめできる1枚です。
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Wikipedia:Hi-STANDARD、難波章浩、CUBISMO GRAFICO、LOW IQ 01、磯部正文、チャットモンチー
Media:Akira Tsuneoka Officail Site、Hi-STANDARD Officail Site、恒正彦 Official Site、恒岡章 Twitter、UMINECO RECORDS Youtube
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