「Blink-182」での活動以外でもジャンルの垣根を越えて活躍し、現代のドラムヒーローの一人として世界中から圧倒的な人気を誇る「トラヴィス・バーカー」。この記事ではトラヴィス氏の所属したバンドや使用機材、プレイスタイルを分析、解説していきます。
目次
生い立ち、下積み時代 所属バンドやキャリア プレイスタイル分析 使用機材 おすすめの音源
本名:Travis Randon Barker(トラヴィス・ランドン・バーカー)
1975年11月14日にアメリカのカリフォルニア州、フォンタナで生まれ、4歳からドラムを始めました。フォンタナ高校に入学するとジャズとマーチングでドラムセットやスネアドラムを演奏し、コンテストやフェスティバルなどで多くの経験を積み、トラディショナルなテクニックやリズムを身につけています。高校卒業後はラグナ・ビーチでゴミ拾いの仕事をする傍ら、パンクロックバンド「Snot and Feeble」のドラマーとして活動していましたが、1997年に「The Aquabats」にスカウトされ加入、同年「Blink-182」とのツアー中、ドラマーが脱退したBlink-182のサポートを務めます。1998年に正式に加入し、「ジョシュ・フリース」の代役として「The Vandals」のサポートも行っています。
トラヴィス氏が「Blink-182」に加入後初めて参加したアルバム「Enema Of State」が1999年6月にリリースされると一気にメインストリームに駆け上がり、当時最大の人気を誇るポップパンクバンドとなります。3曲シングルカットされ、「All the Small Things」のMVはMTVビデオ・ミュージック・アワードにおいてBest Group Videoを受賞。最終的にこのアルバムは世界で1500万枚のセールスを記録し、商業的な大成功を収めます。
2001年にリリースされた「Take Off Your Pants and Jacket」もビルボード初登場1位、世界で1400万枚を超えるヒットとなり、バンドの地位を盤石のものとしました。トラヴィス氏のタトゥーやパフォーマンスによるドラムスターとしての人気や多彩なリズムパターンやグルーヴによって楽曲の幅が広がったことが大きく影響しています。
2003年に5枚目となるタイトル無しのアルバム「Blink-182」をリリース、ポップパンクバンドから様々なジャンルや実験的な要素を取り入れたロックバンドへの成熟が見て取れるアルバムとなっており、シングルカットされた2曲はビルボードチャートで1位を獲得しますが、その実験的なサウンドにより賛否が分かれる結果となります。更に、過酷なツアースケジュールや音楽性の違いなどによりマークとトムの亀裂が表面化し、ツアー中に起きたトラヴィス氏の負傷をきっかけに2005年に活動休止を発表します。
2009年に再結成を発表し、2011年に「Neighborhoods」、2016年に「California」をリリースしますが、この間にトムが脱退し、「マット・スキバ(Alkaline Trio)」が加入しています。
音楽プロデューサーである「ジェリー・フィン」の紹介により「ティム・アームストロング(Rancid)」がラップとロックを融合をコンセプトにした新しく作ったバンド「Transplants」にトラヴィス氏を誘います。スピーディなパンクドラミングだけでなく、グルーヴを重視したドラミングによってトラヴィス氏のテクニックやスキル、ドラマーとしての評価も更に上がり、このバンドに加入以降、特にヒップホップ、ラップロック方面にキャリアが広がったのは間違いありません。
2005年にセカンドアルバム「Haunted Cities」をリリース、2006年に活動休止を発表しますが、2010年に再結成し、2013年には「In a Warzone」、2017年にはEP「Take Cover」を発表しています。
Blink-182が活動休止を発表した2005年にトムは「Angels and Airwaves」を結成、マークとトラヴィスは「+44」を結成します。結成当初はサンプリングやシンセサイザー、電子ドラムなどの電子楽器を駆使した実験的なサウンドでしたが、メンバーが加わり、ジャムを重ねたことでアコースティックと上手く融合させており、パンクよりもオルタナティブ・ロックと呼ぶのが似合う音楽となっています。トラヴィス氏の個性的なパターンやフィルは変わらず炸裂しており、バンドの軸を決める役割を担っています。
2006年に「When Your Heart Stops Beating」が発表され、ビルボード初登場10位を記録しましたが、その後トラヴィス氏の怪我や飛行機事故などが重なり思うように活動できていませんでした。さらに2009年にはBlink-182がシーンに復帰することになりますが、+44の活動は継続すると発表されています。
2008年頃トラヴィス氏は「Crank That / リアーナ」などのリミックスをYoutubeに投稿したことで、人気を博したため、自身のソロプロジェクトを模索しますが、様々なトラブルにより延期になります。
2年以上の期間を経て、2011年3月にソロデビューとなる「Give the Drummer Some」をリリース。
ファンクやヒップホップの要素が強いアルバムとなっていますが、パンク色を感じるフレーズやフィル、ドラムンベースなどのダンスミュージックのグルーヴもふんだんに取り入れた、ある意味トラヴィス氏の完成されたドラミングを聴くことができます。
上記以外にもBox Car Racer、パフ・ダディ、Expensive Taste、ジュエルズ・サンタナ、Idiot Pilot、Federation、DJ AM、スラッシュ(Guns N’ Roses)、GHOSTEMANE、XXXTentacion、$uicideboy$、マシン・ガン・ケリー、ウィロー・スミス、アトレイユ、アヴリル・ラヴィーンなどのサポートやスティーヴ・アオキのドキュメンタリー映画「I’ll Sleep When I’m Dead」への出演など多岐に渡り活躍しています。
トラヴィス氏のプレイスタイルは一言で言い表すのであれば”超個性的”です。スピード、グルーヴ、テクニックの3つを兼ね備え、ジャンルや曲によってミックスし、独特なビートを生み出しており、まさに唯一無二のドラミングと言って良いでしょう。いくつかの動画を見ながらトラヴィス氏のプレイスタイルを分析していきます。
※「Enema of State」の1曲目に収録されている「Dumpweed」のドラミング。
トラヴィス氏のプレイを語る上で欠かせないのはまずパンクスタイルのドラミングです。ドラムスティックを短く持つことで、スティックコントロールの精度を高め、速いスピードでも正確性を保っています。頭や腕を大きく振りかぶり、派手なパフォーマンスができているのは休符の位置や長さを熟知し、正確なタイム感があればこそです。この動画では足のダブルアクションはスライド奏法を使用していることがわかります。
※2018年のライブ映像。「Blink-182」収録の「Violence」のドラミング。
実験的なサウンドメイクがされた「Blink-182」ではトラヴィス氏もドラムンベースやジャズ、ラテンなどの多くのジャンルを取り入れたフレーズを作り上げており、この動画の中だけでもかなり多くのドラムパターンを組み合わせていることが分かります。ライブ中にはアドリブを入れることも有名で、原曲とは違ったアプローチで演奏できる技術も持っています。タオルで目隠しをしてプレイするのもライブ中にはよく見られる光景です。
※卓越したマーチングスキルを披露しているトラヴィス。
幼少期に所属していたマーチングでのテクニックやパフォーマンスはトラヴィス氏のプレイスタイルに大きな影響を与えています。ドラムセットを叩く際にもジャズやマーチングなどのトラディショナルなスタイルがよく見ることができ、右足を骨折した際には左足で同様のプレイができるなど、卓越した4ウェイコントロールも持っています。
※INDUSTRY BABY / Lil Nas X のRemix。
「Transplants」加入以降よく見られるのが、ヒップホップなどR&Bの影響を受けた音楽でのドラミングです。タイトなリズムが求められるジャンルですが、グルーヴと手数の多さを上手く融合させたプレイを聴くことができます。クロススティッキングを多用するのもトラヴィス氏の特徴の1つです。
トラヴィス氏はドラムスローンを高くセットし、タムやシンバルをフラットに並べるセッティングを好んでいます。スプラッシュやチャイナなどエフェクト系シンバルやカウベルなどのパーカッションも多用しますが、タムやフロアはシンプルな構成で、ワンバス、シングルペダルもパンクドラマーらしいセッティングです。
タムタム | 12″ × 8″ (or 12″ × 6″) |
フロアタム | 16″ × 14″ 14″ × 14″ |
バスドラム | 20″ × 20″ |
タムタム | 12″ × 5″ |
フロアタム | 16″ × 14″ |
バスドラム | 22″ × 22″ |
タムタム | 12″ × 8″ (Amber Starlight) |
フロアタム | 16″ × 14″ (Yellow Starlight) 18″ × 16″ (Red Starlight) |
バスドラム | 22″ × 14″ (Blue Starlight) |
Blink-182加入時〜再結成時まではOCDPを、2011年以降はDWを使用しています。
※マーチングスネア
スネアドラムも同じく現在はDWを使用。
ハイハット | 14″ A Zildjian Quick Beat Hi Hats 14″ A Zildjian Mastersound HiHats |
クラッシュ | 14″ A Custom Crash 16″ A Custom Crash 17″ K Sweet Crash 18″ A Custom Projection Crash 19″ A Custom Projection Crash 20″ FX Oriental Crash of Doom |
ライド | 20″ K Ride 21″ A Zildjian Sweet Ride Brilliant 21″ K Sweet Ride 23″ A Zildjian Sweet Ride 23″ K Sweet Ride 24″ K Light Ride |
エフェクト系 | 9″ K Custom Hybrid Splash 10″ A Custom EFX Splash 11″ K Custom Hybrid Splash 18″ FX Oriental China Trash 18″ K Custom Special Dry Trash China 12″ FX Spiral Stacker |
シンバルはキャリアスタート時から一貫して「Zildjian」を使用しています。
右足を負傷した際はDW5002を使用して左足で演奏しています。
ハイハットスタンド | DW / 5500 |
シンバルスタンド | DW / 9000 |
スネアスタンド | DW / 9300AL |
ドラムスローン | DW / 9100M |
DW9000シリーズで統一。
ドラムセットには電子ドラムのパッドやトリガー、モジュールやサンプラーパッドなどが組み込まれていることも多く見られます。
トラヴィス氏のドラミングが収録されたおすすめの音源を紹介します。
長期活動休止期間に入る前にリリースされたBlink-182の5枚目となるアルバムであり、過去のポップパンク色を残しつつ、様々なアプローチが施されたバンドの成熟を感じさせるアルバムになっています。賛否が分かれ、過去作のような大ヒットとはなりませんでしたが、それでも全米220万枚のセールスも記録しています。1曲目の「Feeling This」からドラムンビートを思わせるパターンから入り、「I Miss You」などのスローテンポで聴かせる曲やパンク色の強い「Violence」や「Here’s Your Letter」まで1枚で様々な表情が見れる作品です。トラヴィス氏のドラミングも多彩でジャンルを超えたドラミングを感じられるアルバムです。
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Blink-182最大のヒット作である「Enema of State」はトラヴィス氏が初めて参加したアルバムであり、疾走感漂う西海岸パンクを感じさせる1曲目の「Dumpweed」からから始まり「The Party Song」や「Anthem」などのスピーディーな曲から「What’s My Age Again?」や「All the Small Things」などのキャッチーな曲までアルバムを通して”THEポップパンク”を楽しめる一枚です。トラヴィス氏のドラミングはシンプルですが、この頃から既に個性的なパターンやフィルを使用していたことが分かります。
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度重なる怪我や事故などのトラブルを乗り越えて制作されたトラヴィス氏のソロアルバム「Give the Drummer Some」はドラマーなら一度は聞いておきたいアルバムです。今までのスピーディなドラミングよりもグルーヴ&テクニックを感じさせる内容となっており、トラヴィス氏の楽曲、歌、リズムへの向き合い方を理解するためには必聴です。ドラムパターンのみ聴くのではなく、ギターやベース、ボーカルなど他の楽器との合わせ方に注目して聞いてみることをおすすめします。
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Wikipedia:Travis Barker、Blink-182、Transplants、+44
Media:EQUIPBOARD、DW Official Instagram
書籍:Can I Say: Living Large, Cheating Death, and Drums, Drums, Drums
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