知っていると得する豆知識!ドラムの歴史を振り返ろう!《第三部 クロスオーバーによる更なる進化》[記事公開日]2022年12月29日
[最終更新日]2024年3月30日

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1970年代後半 1980年代 1990年代以降

1980年代

19870年代から電子楽器の導入が進んでいましたが、1980年代に入ると「SIMMONS」によって電子ドラムが開発され、多くのバンドで導入されていきます。反対に電子楽器を取り入れずにアナログにこだわったアンダーグラウンドムーヴメントも発展し、90年代に爆発するまで勢いを高めていくことになります。アコースティックドラムではSONORが流行し、YAMAHA、Pearl、TAMAなどの国内メーカーが世界にも進出、DWはいち早くツインペダルを開発し、メタルやフュージョンなどのテクニカルドラマー達が多用していくことになります。

スラッシュメタル

NWOBHM/スピードメタルの流れを汲みつつ、ハードコアの影響を色濃く受けたのがスラッシュメタルです。通常の8ビートを倍回しで叩くダブルタイム8ビートが軸となっており、スラッシュビートとも呼ばれていました。BPMも200前後の曲が多く、ツーバスを16分で連打するなどの奏法も多く見られます。既にリズムパターンやビートは完成しつつありましたが、その中で新しいビートを生み出したジャンルとも言えるでしょう。


※日本ではスラッシュ四天王と呼ばれる「Metallica」のドラマー「ラーズ・ウルリッヒ」氏はカリスマ性を持ったドラマーでした。


※こちらもスラッシュ四天王の一角「Slayer」のドラマー「デイヴ・ロンバード」氏の高速ツーバス連打は圧巻の一言。


※スラッシュ四天王の中でもパンク色が強かったのが「Anthrax」。ドラマーの「チャーリー・ベナンテ」氏は伝説のメタルバンド「PANTERA」にも加入。


※後期にはヘヴィな曲が多くなりましたが、初期の頃はスラッシュ色が強かった「PANTERA」のドラマー「ヴィニー・ポール」氏とレジェンドギタリストの一人「ダイムバッグ・ダレル」氏はアボット兄弟として有名でした。

メロディックハードコア

メロディックハードコアはポップパンクやハードコア、オルタナティブ等に分類されることが多いですが、「Bad Religion」や「NOFX」などを筆頭にハードコア由来の速いテンポのリズム、歌をよりキャッチーでメロディアスなサウンドにしていることから由来します。DIYの精神も引き継がれ「Epitaph Records」や「Fat Wreck Chords」などの自主レーベルは現在のインディーズ文化に強い影響を与えています。


※最初のメロディックハードコアバンドとも言える「Bad Religion」のドラマーだった「ブルックス・ワッカーマン」氏は現在「Avenged Sevenfold」に在籍。


※メロコアを世界中に広めたのは「NOFX」の力が大きいかもしれません。ドラマーの「エリック・サンディン」氏のフットワークはツインペダルと勘違いされるほど。


※「NOFX」のレーベルメイト「Lagwagon」のドラマー「デイヴ・ラウン」氏は速いプレイはもちろんテクニカルなプレイも特徴的。


※「Strung Out」はメタル色の強いメロコアバンドであり、全盛期に在籍していた「ジョーダン・バーンズ」氏のドラミングの影響は大きいと言えるでしょう。


※国内の音楽シーンに衝撃を与えたのは「Hi-Standard」であり、メロコアを語る上では外せません。「恒岡章」氏は高速のドラミングだけでなく、グルーヴィーなプレイが持ち味です。

グラインドコア/デスメタル

スラッシュメタルが更に激しさを増していき、アンダーグラウンドで進化していったハードコアと再度ミックスされることになり生まれたのがグラインドコアやデスメタルです。デスヴォイスと呼ばれるシャウトが特徴であり、高速でシンバル、バスドラム、スネアドラムを連打するブラストビートを生み出したのは、グラインドコアの名付け親とでもある「Napalm Death」のドラマー「ミック・ハリス」氏と言われています。グラインドコアはハードコアより、デスメタルはメタルよりですが、音楽性としては非常に似ていると言えます。


※「ミック・ハリス」氏のドラミングは「Napalm Death」の音楽性を決定づけたとされています。


※「Napalm Death」などの海外のグラインドコアバンドに多大な影響を与えた日本の「S.O.B」も有名。「YASUE」氏は長い間ドラマーとして活躍しています。


※「Cannibal Corpse」はデスメタル創世記から現在に至るまで一貫した音楽性を持ち、「ポール・マズルケビッチ」氏はオリジナルメンバーとして現在も活躍中。


※更なる発展を遂げ、マスコアやカオティックハードコアと呼ばれる「Converge」。現在のドラマーは「ベン・コラー」氏。

ミクスチャー/ラップロック(メタル)

ミクスチャーは日本のみの呼び方であり、海外ではラップロックやラップメタルと呼ばれています。バンドにラップスタイルを取り入れたり、ファンクロックから派生したファンク色の強いバンドを指すことが多く、ライトなバンドからヘヴィなバンドまで多種多様な音楽性を持ちます。オルタナティブにも分類され、アンダーグラウンドで発展しましたが、メインストリームを駆け上がっていったバンドも多く存在しました。スカなどの黒人音楽の要素を多く取り入れたバンドの総称とも言えます。


※「Fishbone」はミクスチャー/ラップロックの先駆けとして有名であり、多くのバンドに影響を与えました。ドラマーは「フィッシュ」氏が長年担当しています。


※ヘヴィなサウンドとラップが融合したラップメタルの元祖「Rage Against The Machine」のドラマー「ブラッド・ウィルク」氏はシンプルかつタイトなドラミングが特徴。


※ヘヴィなサウンドとラップが融合したラップメタルの元祖「Rage Against The Machine」のドラマー「ブラッド・ウィルク」氏はシンプルかつタイトなドラミングが特徴。


※21世紀で最も売れたバンドとの呼び声の高い「Linkin Park」のドラマーは「ロブ・ボードン」氏。


※メタル色の強かった「Limp Bizkit」のドラマー「ジョン・オットー」氏は「OCDP」のドラムセットを世に広めました。

アシッドジャズ

ロックシーンのジャンルが細分化されていく中、ジャズもまた発展を遂げており、ファンクやソウルなどとクロスオーバーしていきます。アシッドジャズは元々レーベルの名前から来ており、音楽性を表すジャンルとしてはジャズファンクやソウルジャズなども使用されることが多いでしょう。


※アシッドジャズを世に広めたのは「Incognito」と言われており、多くのメンバーを擁しており「ギャビン・ハリソン」氏なども在籍していました。


※最も有名なアシッドジャズといえば「Jamiroquai」のこの曲でしょう。ドラマーの「デリック・マッケンジー」氏は初期の頃から「ジェイ・ケイ」氏を支えています。

テクノ

ディスコやハウスの流れを汲み、電子楽器を取り入れ更に音楽の幅が広がり生まれたのがテクノです。グループとしてもバンドとしても多くのアーティストがこのジャンルを席巻しました。特に「SIMMONS」が開発した電子ドラムは多くのバンドで採用されており、ハイブリッドドラムの元祖とも言えるムーヴメントを起こしました。


※テクノを代表するグループ「KRAFTWERK」はドイツで結成し、テクノポップと呼ばれることも。ドラマーのいない打ち込みの元祖とも言えます。

https://www.youtube.com/watch?v=hzSIwivBWJc
※「YMO」も日本が誇る世界的知名度をもつバンドであり、ドラマーの「高橋幸宏」はいち早くポラードやULTSOUNDなどのトリガーを多く取り入れていました。


※「The Prodigy」はメンバーにドラムはいませんが、ライブではサポートを入れることも。この曲のドラムレコーディングは「デイヴ・グロール」氏が担当しました。

この時代に設立されたメーカー

  • CANOPUS(1981年):ヴィンテージテイストのドラムが特徴であり、現在は世界中にファンを持つメーカーとなっています。
  • SABIAN(1981年):「Zildjian」から派生したシンバルメーカーの1つであり、多くのドラマーに愛されながら世界3大シンバルメーカーに成長。

1990年代以降

80年代にテクノなどの電子楽器を取り入れたジャンルが流行したことにより電子楽器の発展が進み、「Roland」のV-Drumsや「YAMAHA」のDTXなど電子ドラムはこの時代から急激に進化し、アコースティックドラムに近づいていきます。アコースティックドラムでも「OCDP」などをはじめとする新鋭ドラムメーカーが次々に誕生する群雄割拠の時代へと突入します。ロックシーンにおいては最後の大きなメインストリームが出来上がり、その後に当確を表すダンスミュージックも大きな進化と遂げます。セットの変化としてはトラップセットからドラムセットに切り替わるタイミングで外されていったカウベルやウッドブロックなどのパーカッションもドラムセットに組み込むドラマーが増えてきました。

グランジ

パンクやハードコアの流れを汲むことからオルタナティブと言われることがありますが、80年代にアンダーグラウンドで燻っていたものが一気に流れ出ていき、多くの人気バンドを輩出することになったため、時代の象徴とも言えるジャンルと言えます。この時代以降、ここまで大きなムーヴメントが起きることは無かったこともあり、多くのミュージシャン達が憧れています。


※グランジだけでなく90年代を代表するバンド「NIRVANA」のドラマー「デイヴ・グロール」氏はパワフルなドラミングで大ヒットを生むきっかけになりました。


※「NIRVANA」と人気を2分するほどだった「Pearl Jam」のドラマー「マット・キャメロン」氏は「Soundgarden」のドラマーとしても活躍。


※轟音ファズサウンドで有名な「Dinosaur Jr. 」のドラマー「マーフ」氏はオリジナルメンバーであり、再結成時にもドラムを担当しています。


※「ジミー・チェンバレン」氏は結成当初から「The Smashing Pumpkins」のドラマーを務めており、ヒットを重ねる屋台骨となっていました。

ポップパンク

グランジブーム終焉の後に出てきたのがパンクをよりポップなものにしたポップパンクです。メロディックハードコアと混同されることもありますが、政治的な要素が薄い歌詞やミドルテンポな楽曲が多いのが特徴です。現在ではパンクという要素よりもポピュラー音楽の新しい様式の1つとして定着しています。


※あまりポップパンクとは言われないことが多いですが、後のバンドに大きな影響を与えたのが「The Offsprig」です。全盛期を支えたのは「アトム・ウィラード」氏。


※最も有名なポップバンクと言えば「Greenday」と言えるでしょう。ドラマーと支えてきたのは「トレ・クール」氏。


※現代のドラムヒーローの1人である「トラヴィス・バーカー」氏は「Blink-182」以外にも様々なバンドやジャンルで活躍。


※「Yellowcard」で活躍した「ロンギニュー・パーソンズ」氏はパワフルさとグルーヴ、テクニックを併せ持っています。

ニューメタル

日本ではラウドロックと呼ばれることもあるこのジャンルはヘヴィメタルの流れを汲みつつ、様々なジャンルを吸収していったものとなっているため、音楽性が異なっていても同じジャンルにされることもしばしば。新しい世代のヘヴィメタルといった解釈をすると分かりやすいかもしれません。


※「デイヴィッド・シルヴェリア」氏は「KoRn」を脱退してしまいましたが、ヘヴィネスを強調したリズムパターンによってバンドの人気を決定付けることに貢献しています。


※初期「Slipknot」で活躍した「ジョーイ・ジョーディソン」氏はハイスピードドラミングとヘヴィネスドラミングを使い分けドラムヒーローの一角を担っていました。

ブリットポップ

ポップパンクと共にグランジ終焉後に表に出てきたのが、ブリットポップです。ロックの全盛期であった60年代のリバイバルのようなストレートな音楽性が特徴で現在のロックシーンでも活躍しているバンドが多く登場しました。


※ブリットポップの代名詞的存在は「Oasis」が真っ先に挙げられます。ドラマーは四人入れ替わりましたが、「リンゴ・スター」氏の息子である「ザック・スターキー」氏が最も人気があったドラマーでしょう。


※「Blur」も「Oasis」と同じくブリットポップが流行るきっかけとなったバンドです。ドラマーは「デイヴ・ロウントゥリー」氏。

ドラムンベース

英語では「Drum and bass」と表記されるように早いテンポのドラムパターンとうねるベースラインが特徴的なジャンルです。基本的には打ち込みで作られることが多いですが、これをドラマーが演奏する人力ドラムンベースというものがあります。フュージョンドラマーとしても紹介した「ジョジョ・メイヤー」氏が元祖と言われています。更に進化したものは「ダブステップ」と呼ばれています。


※マルチプレイヤーである「ルイス・コール」氏による人力ドラムンベース。

1990年代以降は小口径や折り畳みができるドラムセットやカホンなど携帯性を高めた楽器やエフェクトシンバルと呼ばれる穴あきシンバルやスタックシンバルなどが普及していき、アコースティックドラムと電子ドラムを融合させたハイブリッドドラムなど、多種多様のジャンルに適応できる楽器が開発されています。

最後に…

三部に渡りドラムの歴史を追ってきましたが、紹介しきれていない部分はまだまだあります。主要な部分は知ることができたと思いますので、興味のある方は是非ご自身でもっと深掘りしていってみてください。そして今後も私達の想像を超えるようなジャンルや楽器を誰かが開発、誕生させていくことになるでしょう。もしかしたらそれはこの記事を読んでくれたあなたかもしれませんね。

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